第 7 章
海外ホテル極楽滞在の極意
Chapter6
旅とスマホのスマートな関係
Hotel Botanico (Puerto De La Cruz, Spain)
ホテルの電話代はなぜ高い?
かつて、日本人ゲストにとって客室設備の中で最も重要なポイントの1つは、「バスタブの有無」でした。ところがインターネットの普及に伴って、「無料WIFIの有無」の需要がダントツに高まってきています。
ところで、海外旅行先での通信手段がまだ固定電話主流だった1990年前半、ホテルの電話料金がグンと跳ね上がったことがありました。理由は、それまでの交換手による手動のオペレーションからデジタル基板による自動化へのシフトチェンジ。
一般家庭のように1台分でハイおしまいというわけにはいきませんし、サービス向上のための多機能オプション搭載もマストとあって、大型ホテルともなれば設備投資は莫大なものになります。その回収分が「通話料」としてチャージされるようになったというわけです。しかも、つながってもつながらなくても、コール音がしたとたんに課金という、とんでもないホテルもあったのです。
ところがホテルにとって誤算だったのは、同時に携帯電話が猛スピードで普及してしまったこと。せっかく大金を投じて用意した客室電話の外線利用数が、あっという間に激減してしまったのです。となれば、取れるところから確実に徴収するしかありません。そう、電話回線を利用したインターネット接続です。
WIFI接続という「サービス」
インターネット接続はその後もブロードバンド、ハイスピードへと進化し、通信規格もBluetoothからWIFIへと変化・多様化。それにともない世界各地のホテルで、ハイスピードインターネットやWIFI接続無料をうたうところが増えてきました。特に顕著なのが3ツ星以下のカジュアルクラス。コンシェルジュがいなくても、ゲストは自分のスマホでいくらでも現地情報をゲットできるので、接続無料が別の意味での「サービス」というわけです。
反対に、高級ホテルでは相変わらず高額な接続料を設定しているところがほとんどです。すでに基盤はあるわけですから、さほど設備投資はかからないはずですが、なぜいまだに無料にできないのか。もうこれは、「そういうもの」と思うしかありませんね。ラグジュアリーホテルでは、全ての「サービス」が有料なのだと。
スマホを置いて街に出よう
時経て今やスマホの全盛時代。これ1台で全てがまかなえ、海外にいる不便、時差、負担はますます軽減されています。
とはいえ、誰もがスマホに頼り切りになっているのではないかという危惧も。海外に行っても、目線は常に手元。外国語の挨拶一つできなくても、スマホが勝手にしゃべってくれるし、いつでも日本とつながれる。これって人間をダメにしてしまうのでは…。どうしても仕事で必要な人はともかく、せめて旅先ではスマホと距離を取ってみませんか。どうでもいい情報はシャットアウトして、自分の頭と体で対処する。その方がずっと知識も経験も豊かになるような気がします。
eチケットもホテルバウチャーも、プリントアウトせずスマホで表示するだけでOKになりつつある昨今。こうしたシステムは使いこなせると便利ですが、いざ機械が壊れたら全く何もできなくなるのも事実です。スマホは便利、でも頼り切らない──自分にとって何が必要なのかを見極めて、常にスマホを携帯しなければという強迫観念から脱しましょう。その時、スマホは初めてあなたの有能なセクレタリーになるのだと思いますよ。