Vol.
123
バルト三国の可憐な小都市をめぐる:後編
この夏、積年の願いがかない、ようやく訪れることのできたバルトの国々。素朴で美しい街並みにうっとりとため息をつき、物価の安さに感嘆し、人々の内に秘めたる温かなマインドに口元がほころび、あっという間に見どころを制覇してしまったコンパクトさに苦笑いし…。何とも印象的な滞在を送ることができました。今回はその後編をお送りします。
ヴィリニュスは東ヨーロッパの交通の要衝
さてさて、私が先の旅で中継点となるヘルシンキから最初に入ったのは、リトアニアのヴィリニュスでありました。実は鉄道でカウナス日帰り以外は、バルト三国の移動はすべてバスにしたのですな。いや、鉄道ネットワークはなくとも飛行機はちゃんと飛んでいるのですよ。しかしどの国も見どころのほとんどが郊外にあるため、バスを駆使した方が格段に便利なのであります。
特筆すべきはヴィリニュスのバスセンター。ここはすごかったですねえ。行き先を見ると、ミンスク、ロシア、ベラルーシ、モスクワ、ポーランド、チェコ、ハンガリー、スウェーデン等々、周辺ヨーロッパ及びロシアのほとんどの都市にバスが出ているのです。まさに交通の要衝なのですな。
出入りするバスもさまざまで、デラックスな大型バスから、窓ガラスまで泥だらけというとんでもないものも。「いいバスに乗れないとつらい」と聞かされていたので心配でしたが、私が乗車したリガ行きは実に立派なシロモノ。快適な道行きが楽しめました。
ヴィリニュスからカウナスへ
この旅のもう1つのハイライトが、リトアニアのカウナスにある杉原千畝の記念館の見学でした。杉原千畝は第二次世界大戦中のカウナスで、ナチス・ドイツの迫害から逃れてきたユダヤ人に日本通過ヴィザを発給、約6000人を救った「東洋のシンドラー」と呼ばれた外交官です。
記念館は、小さな町の住宅街の中にある「コレが領事館だったの!?」というくらいこぢんまりとした建物。当時のままの執務室、タイプライター、「命のヴィザ」の実物…。静かな感動とともに良い時間を過ごしました。去年クラクフでシンドラーの記念館に続く、私の巡礼の旅第2弾でした。
バルト三国の由々しきベッド問題
そんな思い出深いリトアニアとラトビアの旅で最も印象的だったこと、それはベッドのヘナヘナぶりに他なりません(笑)。もう腰が折れるくらい軟らかいし、枕もふわふわ。そうでなくとも腰が弱い私は、睡眠どころの話ではありません。横になっていることすらつらいのですよ。
ヴィリニュスではケンピンスキーに泊まりましたが、チェックイン時に「ここのベッドは軟らかいですが大丈夫でしょうか」と。あらかじめ聞いてくるということは、そうクレームが多いことの証左ではありますまいか(苦笑)。
部屋に案内してくれたスタッフと一緒に確認し「う〜ん、これはちょっと…」と言うと、すかさずベッドのアッパーの部分を外してくれました。セパレート仕様のロウワー部分はややハードな素材になっていて、そこに改めてベッドパットを敷き、硬めにリセットしてくれたのです。さすが市内トップクラスのホテル。他のホテルだと、おそらく自分から申し出ないと対応してくれないのではないかと…。ベッドにこだわりのある方は、覚悟して望んだ方がいいですゾ!
穴場のバルト三国は今が行きどき
バルト三国は年齢に関係なく、ヨーロッパをしっとりと楽しみたい人には最高のデスティネーションでしょう。半日歩いて、お茶を飲んでご飯を食べて、のんびり気ままに過ごす。ホテルは安いしクオリティも高い。パリやロンドンに比べると、本当に予算が少なくてすみます。
そういう点ではまだ穴場であり、今こそが行きどきですね。ベストシーズンは、やはり春から秋。クリスマスムードが楽しい冬も素敵ですが、いかんせん寒すぎです。ヨーロッパで深刻になっている治安での不安面がほぼないことも高ポイントです。たっぷり時間をとって、来春にはぜひバルト三国の魅力を味わってみてください。
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