Vol.
137
新しい個性派ホテルの兆し
人々がホテルに求めるものは、時代とともに変化を遂げる。その昔、ホテルに万能的な贅沢を求めた時代には、レストランと宴会場を多く備えた大型ホテルが建てられた。ニューヨークで言えば、1900年初頭から1940年ぐらいまでに建てられたプラザホテルやウォルドルフアストリアなどがその典型例。だが、不況に叩かれた時代を経て、宴会場を保有しないホテルが増えた。さらに、街に有名シェフレストランが流行ると、レストランも保有しない、宿泊特化型のホテルが主流になった。今や、マンハッタンには、○○イン、○○コート、○○ヤードという名称のホテルが数えられないほど存在する。
だが、そうしたホテルでは、富裕層を満足させることはできない。そこで、登場したのが、高級ブティックホテル。グリニッジホテル、クロスビーストリートホテル、バカラホテル、ビークマンホテルに代表される個性豊かなホテルで、全体をアンティーク(バカラはバカラガラス)で装飾し、客室のみならずレストランまでも、お洒落感覚を溢れさせて人々を引きつける。この波に遅れてはならないと、大手ホテルチェーンも、マリオットがエディション、ハイアットがアンダズ、とブランド名をつけない高級個性派ホテルに力を入れている。
また、ここに来て、需要があがってきそうなのが高級アパートメントホテル。部屋の広さは70平米以上あり、キッチンや洗濯機まで備わっている。プール付きのジムやトリートメントルームなどもついているにもかかわらず、値段は最高級ブランドのフォーシーズンズ、リッツカールトン、パークハイアットなどの半値くらいで泊まれる。一度、こうした高級アパートメントホテルに泊まってしまうと、もう他のホテルには泊まれなくなる人が多い。じわじわとリピーターの数を伸ばし、あるところまでくると、リピーターだけで埋まるようになるので、PRをしなくなる。そして、知っている人だけがいい思いをする隠れ家的なホテルとして存在するようになる。マンハッタンでは、マーマラパークアベニューなどがその代表例として挙げられる。
昔から、アパートメントホテルは存在してきた。だが、それらはランクをつければ、3スタークラスで、倹約家に利用されるものが多かった。新しいコンセプトは、“超豪華億ション”を経験したい人々の需要に応えるためのホテル。素晴らしい施設を備えていながらにして、値段がリーゾナブルなので、短期滞在者にはもちろんのこと、長期滞在者にとても都合のよいホテルとなっている。こうしたホテルを定宿としている人は、多くの人に知られることで、宿泊料金が最高級ホテルに近くなっていくことを心配しているかもしれない。
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著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

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