Vol.
105
時を経ても色あせないホテル
- Eventi Hotel
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10年前に超デラックスホテルAが完成したとき、「素晴らしい造りをしている!」と感動したことを思い出す。だが、最近建った、超デラックスホテルBと比べると、やはり色あせて見えてしまう。部屋のレイアウト、使われている素材、新技術品の導入など、10年間のノウハウの蓄積とそれに基づく進化はダテではないことを実感させられる。
一方、100年以上前に建てられた、プラザホテルのような超豪華ホテルは時を経ても色あせない。光輝く本物の大理石、豪華なシャンデリア、モザイクタイル張りのフロアーなど“芸術品”と呼びたくなる素材は、もはや近代のホテルでは使われていないものだからだ。さらに、近代の建物ではありえない異常な高さの天井や広すぎる廊下などが喚起する“驚きの喜び”なども加わる。
ならば、昨今、建てられるホテルは、どんなに豪華に作っても、時間とともに色あせ、新しいホテルに抜かされて行くのが定めなのか?いや、この定めを覆し、アメリカで大人気となっている独立個性派ホテルが登場してきた。そう、ブティックホテルだ。
ブティックホテルは主にアンティークの素材を利用したホテル。アンティークだから色あせようがない。見れば見るほど味わいがでてくる芸術パーツの組み合わせだ。絵画を鑑賞する楽しみを知った人が美術館に行きたがるがごとく、多くのブティックホテルファンが、ティークデザインを鑑賞しに泊まりに来る。また、これまでのホテルには無かった、“強烈なこだわりと驚き”を提供しているところも多い。たとえば、バワリーホテルのロビーとラウンジは、宿泊しているゲストだけのものとし、外部の人を入れない。そこは、常に静かで心休まるゲストだけの空間。24時間営業のルームサービスを利用すれば、真夜中でもラウンジで食事が楽しめる。クリスビーストリートホテルのラウンジには、自己申告制のバーがあり、ワイン、シャンパン、ハードリカー、ソフトドリンクなど、好きなものをいつでも自由に飲める。このようなサービスは、ゲスト以外は入れないからできる特殊なものだ。この“あなただけの空間”に心地よさを感じた人々がリピーター化することは容易に想像がつく。実際、こうしたポリシーを保持し、隣接したビルにジェームスディーンの巨大壁画まで描いて“感激”を提供しているグリニッジホテルは、ゲストの8割がリピーターという驚くべき数字を誇っている。
大手ホテルチェーンにホテル運営を委ねる利点は、世界に広がるリザベーションネットワークとフリークエントプログラム。だが、リピーターがこれほど容易についてしまうホテルには、それらは必要ない。また、彼らの特殊なサービスは、これまでのホテルの常識外のものだから、大手ホテルチェーンのオペレーションには存在しない。さあ、大手よ、どうやって彼らと勝負する。その手腕を見せて欲しい。
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著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

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