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チップの最新状況
一流レストランのウエイター&ウエイトレスは、チップで大きなお金を稼ぐ。単純計算すると、一人平均200ドルするレストランで働くウエイター&ウエイトレスは、一人担当するごとに36ドル入り、(現在は18%が相場)一晩に15人担当すれば、540ドル稼ぐことになる。ひと月20日間勤務で、10,800ドル。年収にすると129,600ドル(1ドル=100円計算で1,296万円)になる。
一方、キッチンで働く人々はチップは貰えず、月給制で儲ける。会社は、月に10,800ドルもの高給は払えないので、ウエイター&ウエイトレスの稼ぎとは大きな差が生まれる。近頃は、キッチンで働くスタッフからの苦情に対処するため、チップではなく、サービスチャージを自動的に加算して取り、キッチンのスタッフも含めて分配するところがある。
食事を楽しむ我々は、この状況に対処するため、チェック(伝票)を受け取ったら、必ずサービスチャージが書かれていないことを確認することが必要だ。調べずに、チップを払ってしまうと、必要とされる額よりもはるかに多くを払ってしまうことになるかもしれない。また、サービスチャージという単語でなく、グラチュイティー(Gratuity)というチップの類義語が書かれていることもある。これはチップと同じことなので、この名目で金額が加算されていたら、やはりチップは払う必要はない。レストランはグラチュイティーを払ってもらったうえに、気前のいい人から、追加でチップをもらうために、チェックにチップの金額を書き込む欄を用意している。
大きなレストランやホテルでは、大概、チップは勤続年数の長い者が多くを受けるように分配される。また、支払われる前に、源泉徴収も行われる。一方、小さな組織の場合は、毎日、現金で分配されて、持って帰るところが多い。
アメリカに暮らしていると、チップを払わない日はほとんどない。マンションで働くドアマン、ピザを届けてくれたデリバリーマン、ガソリンを給油してくれたスタッフなど、1ドル札は飛ぶように出ていく。アメリカの人口は約3億2千万。単純計算で、子供を省いた2億人が5ドルづつのチップを払ったとしたら、毎日1,000億円ものお金が世の中を動くことになる。現金でもらったお金の多くは、税金対策上、預金されずに世の中を動き回る。世の中を動きまわるお金が増えれば、景気は上がる。チップは正にアメリカの景気を良くするためのカンフル剤としての絶大な役割を果たしている。
日本にチップ制度があれば、多くの職種の人々に夢を与えられるだろう。同時に、景気低迷の救世主的役割をも果たすことだろう。
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著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。
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