Vol.
48
北朝鮮のホテルの中に見たアメリカ
私は昨年、2回北朝鮮に滞在した。主たる目的はホテルの取材にあった。北朝鮮にはさまざまな国から観光客が訪れている。意外と思われるかもしれないが、北朝鮮と国交を持つ国は160カ国以上にのぼり、断絶している国のほうが少数派だ。
北朝鮮では単独で歩きまわることは許されない。必ず北朝鮮政府が派遣した通訳が同行する。私と同行してくれた人は3人いた。そのうちの1人の男性は、小さい頃、日本に住んでいた人で、日本語の新聞をも読むことができる人だった。また、もう1人は20代後半の外国語大学で働く女性で、日本に行ったことは一度もないということだが、ほぼ完ぺきな日本語を話した。3人ともとてもフレンドリーで、北朝鮮の国情勢をいろいろと話してくれた。
私はときには彼らに無理を言いながら、ホテル巡りに同行してもらった。アメリカの高級リゾート地に建つフォーシーズンやリッツカールトンにも負けない、妙香ホテルに行ったときは、妙香山にまつたけのバーベキューを食べに行った帰りのことだった。突然、依頼をして立ち寄ってもらった。フロントで彼らが私の説明をすると、ダークスーツを着た営業部長がでてきて、「How do you do?」と、英語で話しかけられた。彼とは通訳なしで会話を行った。施設のあまりの豪華さに、「どうしてこんなホテルが建てられるんですか?」と、思わず尋ねてしまったほどだった。彼の答えは、「国が建てるから可能なんです」だった。なるほど、個人や企業が建てるのならば採算を考えるから、それなりの物になる。だが、国が、それも最高権力を持った人の一存で建てられるとなれば、そんなことは考えなくていいとなる。
平壌の中央にある、柳京ホテルは1987年に着工をはじめて、長きに渡り工事がとまったままだった。3年前からエジプト企業のバックアップにより再開され、来年に完成するという。東京タワーと同じ高さのガラス張りの巨大ホテルだ。私が昔務めていた、シンガポールのウエスティンスタンフォードは世界一高いホテルとしてギネスに載っていた。それを抜く世界一のホテルを目指して建設された。ウエスティンスタンフォードが韓国の建設業社によって建てられたので、それへの対抗だったという。
どのホテルもアメリカ系ホテルの建築様式とサービスを真似ている。そして、私が視察した、北朝鮮を代表する5つのホテルはアメリカの基準で見ても、4スター以上に値する。来年の柳京ホテルのオープンが待ち遠しい。この取材内容は、電子書籍にして日本とアメリカでほぼ同時発売を開始する。世界初の情報本になるはずだ。
「私が見た北朝鮮のホテル」(著:ケニー奥谷)
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著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。
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