Vol.
33
日本のホテル淘汰時代の序曲
赤坂プリンスホテルの閉館が決定した。これは日本のホテル業界の淘汰時代の序曲と言えるだろう。いやホテル業界だけでなく、この波は旅館業界にも襲いかかっている。大きな改革なしには生き残れないホテル&旅館が日本に溢れだす。
アメリカは日本よりも貧富の差が大きい。また、アメリカ人は自分の生活レベルに沿ったものを選ぶという強い傾向を持っている。たとえば、アメリカでブランド品を持っている人はお金持ちだけ。人々は自分の経済レベルに沿ったファッションをしている。ホテル選びも自分の生活の延長上となる。こうしたファクターが、高価なホテルから安価なホテルまで、それぞれのカテゴリーに泊まる幅広い客層を生みだしている。
一方、日本は中流階級が主たる国。もしアメリカならば、中堅どころのホテルの需要が強くなるところだが、ブランド品の売れ行きを見ればわかるように、お金のあるなしにかかわらず、“ひとりが買えば、みなも買う”という、強い集団行動性を持つ。つまり、生活レベルに沿ったホテルを選ぶとは限らない。
今、日本はデフレの真っただ中。人々がホテルに払える金額が低くなり、ホテルも値段を下げている。だが、「近頃の安いホテルは快適でいい」という集団行動が生まれ、見回すと1万円~5千円程度で泊まれるビジネスホテルが急増した。もはや、3万円のホテルが、デフレ対策で料金を2万円に下げたところで、人々を引きとめておくことはできない。また、彼らが1万円~5千円のホテルと料金で勝負をすれば倒産することになる。やるべきことは、1万円~5千円のホテルとは絶対的に違うという点を明確にして、その差にお金を払ってもらうこと。あるいは、デフレ傾向にない海外からのゲストを多くとること。しかし、それに成功しているホテルはとても少ない。
旅館も同様。最も大きな問題点は食事がついていること。食べたくないものがでてくるかもしれないから、食事なしで、その分安いホテルを選ぶ人が増えている。「旅館の売りは料理とお風呂」をかたくなに守ろうとしていると時勢を読み違えることになる。改革を進める旅館は、お食事処に、寿司、ラーメン、鉄板焼きなどのコーナーを作り、ゲストが食事を選べるように工夫をしだしている。
これから5~10年の間に、日本のホテル&旅館情勢は大きく変わる。生き残れるのは改革に成功したところだけとなるだろう。
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著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。
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