Vol.
18
不景気の打撃を受けるニューヨークのホテル
「70%OFF. Everything must go out!」
こんな看板がニューヨークのいたるところに張られている。
1月から3月の下旬までの3ヶ月間は、ニューヨークのホテルはオフシーズンとなる。ニューヨークのホテルのメジャーなビジネスはコンベンションと呼ばれる、企業主催のグループ・ビジネス。自社の製品をクライアントに紹介したり、勉強会を開いたり、社員の労働意欲を上げるための催しを行ったりする団体だ。こうした企画の開催地にわざわざ寒い場所を選ぶ必要はない。だから、ニューヨークは敬遠されがちになりオフシーズンとなるのだ。
だが、それにしても今年のホテルの稼働率の落ち込みようは尋常ではない。どの企業も業績不振のために予算をカット。金融危機と言われるように、金融関係のビジネスはとくにその傾向が強い。コンベンションも開催されなければ、出張者の数も激減している。ニューヨークは金融の街。今回の不況の打撃を最も強くうけている街と言ってもいいだろう。ホテルは、私の知っている過去15年間で最も悪い状態だ。「同時多発テロのときよりも悪い」などと言う声も上がっている。
本来、こうしたときに、期待がかかるのが日本のレジャー・マーケット。日本も大不況に違いないのだが、不況にとても強いマーケットが存在する。それがシルバー・マーケットとOLマーケット。すでにリタイヤされて安定した老後を過ごす人々。海外旅行に行くことが習慣化されているOLたち。そうした人々を誘致するための営業活動が活発になるはず。ところが、ホテルは過去5年間の好業績に満足して、日本のマーケットを追う努力を怠ってしまった。今はこのマーケットをノックすることすらできない。
極度の円高が追い風となっているうえに、ホテルの値段が昨年の半値になった。街のショップは大バーゲンセールを繰り広げている。韓国ウォンが下落したというニュースがテレビでながれ、昨年の秋は韓国ツアーブームとなった。今はニューヨークがその状況と言ってもいいだろう。“日本マーケットここにあり”を久しぶりに示すために、この情報をみんなで流しまわりたいところだ。
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著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。
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