Vol.
15
人種差別はどこにある
ついに黒人初の大統領が誕生した。私はアメリカ合衆国全ての人々におめでとうを言いたい。ホテルで働いているときによく言われたことがある。「人種差別の国で働くのは大変でしょう。」だが、私はとんでもない誤解だと思っていた。10年間のプラザホテルでの勤務を通して、私は人種差別など感じたことがなかったからだ。
リンカーン大統領が奴隷解放宣言をしたのが1862年。ケネデイー大統領が人種差別を法的に取り払う法案を成立させたのが1962年。キング牧師が「I have a dream」の演説をしたのが、1963年。残念ながら、三人とも暗殺されてしまった。
長きに渡り、アメリカの偉大な指導者たちは人種差別撤廃に命をかけてきたのだ。私がニューヨークで生活を始めたのが1994年。その頃には、とうに差別を徹底的に法律が禁じる体制ができあがっていた。人々のモラルは、人種差別をする人は「人間失格」という三行半を下すようになっていた。職場で人種差別の悩みをもつはずがない。
年齢、性別、人種を問わずに誰もが実力で道を切り開ける世界。それがアメリカ合衆国でなければならない。皆がそれを理想に掲げ、それを理想とできない人々は、むしろ、アメリカ合衆国から去ったほうがいいくらいの風潮がある。今回のオバマ氏の勝利はそれの証だ。まだ誤解を持っている人がいたら、認識を改めて欲しいと思う。
アメリカのホテルでなにかしら不満をもつことが起きたら、「どうせ日本人だからばかにされているのだろう。」と思うのは被害妄想。本当の理由はそんなところにはない。ほとんどの理由は、アメリカの常識というものを知らずに振舞う日本人の身勝手さが引き起こしていることだと思って欲しい。
アメリカに行くときには、アメリカの常識を知ってから行くこと。この当たり前のことがなされていないがために、自分で不満をつくりだしていることがほとんどなのだ。あなたはベルマンに払うチップの相場を知っているだろうか?レストランに入って、まずしなければならないことを知っているだろうか?もしこれらがすぐに分からないようであれば、是非、アメリカに行く前に、アメリカの常識を勉強して欲しい。
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著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。
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