Vol.
11
セクハラ意識の薄い日本のホテル
日本は懲りない人々の集団か?アメリカで、なんど超一流日本企業がセクハラ訴訟で巨額の損失をしてきたことか。それにもかかわらず、日本人は本気でセクハラが何たるかを学ぼうとしていないように私には思える。
セクハラ訴訟はアメリカ社会だけの問題と思っているから、日本での行ないは正さなくていいと思っているのだろうか。だが、そんな心がけだから、うっかりその習慣をアメリカで出してしまい、“しまった”となるのではないか。そのときはもう遅い。企業の社会的名誉はいたく傷つき、同時に数十億円の損害賠償金をとられることになる。
セクハラは女性社員にいやらしいことを言ったり行ったりしなければいいというものではない。肝心なのは、女性社員から「自分が女性であるということを無視している。」と思われないようにすることだ。たとえばエレベーターに乗るとき、女性社員がいたら、「どうぞお先に」というジェスチャーをして先に通すだろうか?これをしないと、彼女らは「女性を無視している。」と怒りを溜めることになる。多くの社員が同じ怒りを溜めたら、集団訴訟に走るかもしれない。
文化的に、日本ではここまでしなくても訴えられたりはしない。だが、文化の違いにできないこともある。たとえばトイレの掃除。日本では、多くの男性トイレの掃除を女性スタッフが担当している。インターナショナルホテルチェーンですら、女性スタッフが「失礼します。」と言って入ってくる。私は思わず、「失礼しました。」と言ってトイレから出てしまう。こんな配属は信じがたきことだ。
アメリカならば、「女性ということを無視した配属」ということで訴えられるだろう。実際、私はアメリカの男性トイレに女性スタッフが掃除に入ってくるのを経験したことがない。男性トイレの掃除は男性スタッフが担当するのがアメリカのルールだ。
日本はいつまでセクハラ意識の改革を怠りつづけるつもりなのか。これは日本の文化として通し続けられるものではない。遅れとして見られることだ。せめて、ホテルたるもの、こうした行ないを正して、アメリカ人ゲストに驚かれない体制を作って欲しいとつくづく思う。
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著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。
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