HOTEL in U.S.A 私が見たアメリカのホテル

Vol.
8

ホテルはコーポレート・イメージの象徴

学生時代の友人がとても大きな取引をするということで、総勢8人で泊まりにきたことがある。本来なら、予算の都合でプラザには泊まれない。だが、そのときばかりは、同行した弁護士がプラザにするべきだと主張したので、会社はそうせざるをえなかった。
さらに、弁護士は言った。「相手をプラザに招待して夕食をとろう。」さすがに、アメリカ企業との取引を専門にしているだけあって、アメリカの仕来たりを理解していた。

アメリカ企業のオフィスに行くと、その贅沢な造りに驚かされることが多い。平社員の肩書きを持つ者まで個室を持っていたりする。机はハイテク装備できれいに整頓されている。
その様子をみて、相手はまずその会社の利益を想像する。そして、「この会社とならビジネスをしたい」と思うようになる。彼らにとってオフィスはコーポレート・イメージの象徴。良いイメージを創りあげることは相手の信頼を得るうえでとても重要だ。
オフィスを持たない出張者の場合、コーポレート・イメージの象徴はホテルになる。だから、アメリカ企業を相手にするなら、一流のホテルに泊まることが大切なことなのだ。
とある日本の一流メーカーから予約をプラザでよく受けた。しかし、宿泊していたゲストは全員、アメリカ法人で働くアメリカ人だった。その会社のアメリカでの成功の鍵は、アメリカ人に経営権を任せていることにある。だから、本社と現地法人の間には様々な差ができている。日本からくる社員はプラザには泊まれない。

多くの日本企業はバブル経済が去ったあとに出張費を設定した。それから10数年にもなる。その間、アメリカのホテルの値段は3~5倍にもなってしまった。だが、ほとんどの企業では予算の大幅な見直しがなされていない。当然のことながら、日本のビジネスマンは一流ホテルからエコノミーホテルへと流れた。
相手は会話の中で、どこに泊まっているのか聞いて来る。そのときが相手を引きつけるチャンスだ。だが、残念なことに、気まずそうにエコノミーホテルの名を言って会社の格を下げてしまうのが現状だ。
駐在員とミーテイングするために来るのならそれでいい。だが、アメリカ企業と取引をするのならば、こうしたアメリカの仕来たりを理解して一流のホテルに泊まる予算を用意するべきだ。

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著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

奥谷 啓介オフィシャルサイト

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