スペインの至宝パラドールで過ごす歴史と文化に彩られた優雅な休日
パラドールはスペイン全土に展開している国営のホテル。中世の古城や王侯貴族の邸宅や別荘、修道院などの歴史的建造物を利用しており、居ながらにしてスペイン中世のムードを感じることができる貴重な存在です。中には歴史遺産に指定されているものや、歴史的著名人にゆかりにあるパラドールも…。特徴は館内や敷地内には当時の姿をとどめつつ、客室は贅沢かつ優雅に改装されていること。今回はスペインを旅するなら、一度は泊まってみたいあこがれのパラドールをご紹介します。
①宿泊ゲストしか足を運べない厳かな空間で時を過ごす
「パラドール デ グラダナ」
いずれも魅力的なパラドールの中でもトップクラスの人気を誇るのが、グラナダのサン・フランシスコ修道院を改装したものでしょう。世界遺産アルハンブラ宮殿の敷地内にあるというロケーションの素晴らしさはもとより、建物内部には宿泊ゲストしか入ることができないという特別感が人気のヒミツ。それだけに予約は困難で、時期によっては数年先まで満室なのだそうです。
客室は全面改装により近代的な機器・設備を備えつつ、ストイックな修道院時代の風情を残す、清楚で品格のある空間になっています。デザインはイスラム文化とキリスト教が融合したグラナダ独特の様式で、厳かなたたずまいの中庭や礼拝堂で時間を過ごせるのは、滞在ゲストだけの特権。早朝の散歩や夜の幻想的なムードにも心ゆくまで浸ってみたいものです。
館内の美しいデコレーションに目を奪われながらレストランへ。外来ゲストも利用できるため、テーブルを確保したいのなら、遅くともチェックイン時には予約をどうぞ。料理はモダンにアレンジされたアンダルシア料理。朝食のブッフェもそうですが、気取らずにいただけるのが何よりのごちそうです。ゲストにはお忍びで訪れる各界VIPも少なくないそうです。
②テラスから古都トレドの旧市街のパノラマを一望
「パラドール デ トレド」
マドリッドから列車で約30分、中世のまま時が止まってしまったような世界遺産都市トレドは、エル・グレコが後半生を送った町としても知られています。その旧市街を見渡す高台にあるのが、このパラドール。歴史的建造物を利用したものではありませんが、カスティーリャ地方独特の様式で造られた素晴らしい建物で、やはり予約困難なほどの人気を誇っています。
ナチュラルモダンなテイストでまとめられた客室は、シンプルながら洗練を感じさせるしつらえ。素足に心地よいテラコッタのフロアや、広々として快適なバスルーム、そして旧市街の景観が一望できるバルコニーなど、目も心も体も最高にリラックスできる、贅沢な空間が用意されています。またカフェテラスからの眺望も抜群ですので、滞在中に足を運ぶのを忘れずに。
パラドールとして建てられたものの特徴のひとつが、魅力的な施設を有していること。トレドでは中庭に驚くほど大きなプールがあり、街中が静まりかえるシエスタの時間を、ここでのんびり過ごすことができます。また夏季の宿泊の際、ぜひ選んで欲しいのが2食付きのハーフボードプラン。町を見渡すテラス席でいただく郷土料理は絶品。お手頃なワインもそろっています。
③巡礼の聖地を見守り続けるパラドールの最高峰
「パラドール デ サンティアゴ デ コンポステーラ」
キリスト教の3大聖地のひとつであり、今日も巡礼者が絶えないサンティアゴ・デ・コンポステーラのパラドールは、「パラドールの中のパラドール」「パラドールの最高峰」とも呼ばれ、格別な存在として君臨しています。もとは巡礼者のための病院兼宿で創立は1499年。回廊や礼拝堂は当時のまま残されており、450年以上を経てもなお荘厳な雰囲気が漂っています。
重厚でクラシックなムードに包まれたこのパラドールは、客室もとびきり優雅です。寄木細工のフロアに敷かれた手織りのカーペット、リッチな質感のファブリックなど、こだわりは細部まで。それもそのはず、ここは歴代大統領やローマ法王の定宿でもあるのです。特別室があるのは3階。滞在ゲストといえども出入りのできない、「聖域」を抱えたパラドールなのです。
地下にあるレストランでは、近海でとれた新鮮なシーフードをふんだんに使った、バラエティ豊かなメニューを用意。ガリシア風のタパスで気軽なひとときを楽しむのもいいでしょう。また朝食のビュッフェも信じられない品数が! かつて、苦しくつらい旅を終えた巡礼者達を心づくしの食事でもてなしたように、今日も旅人の記憶に残る美味を提供しています。