ミスターMのおいしい旅の話「次の旅はここへ行け!」
Vol.126

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126

対談:高級ホテルを「楽しむ」旅とは? ~その3

Paramount Hotel (Philippe Starck)

お楽しみいただいている、マダムヨーコとのホテル対談も3回目。ファイナルとなる今回は、さまざまな角度からホテルの楽しみ方を追求していきます。単に滞在するだけでなく、その時間の中で何をするか、何ができるか、何をしたいのか。こうした具体的な願望や欲求が、実は、ホテルという「非日常空間」を自分のものとして自由自在に利用する、何よりの動機となるのではないでしょうか。

ホテルで「楽しむ」ための工夫は自分で

マダム前回は、豪華さや快適さ、感動や感激だけがホテルの楽しみじゃない…という結論にたどり着きました。

ミスターそう、ホテルの「楽しみ方」は何でもアリなんだ。まずは自分の滞在しているホテルに関心を持つことだよね。単に寝る場所としか思っていないと、ホテルがゲストのためにプレゼンしているいろいろなことに気がつかないし、何の感想も感興もないまま旅が終わってしまう。

マダムミスターは海外に出られると、時には毎日ホテルを替わられることも多いようですが、どうやってそこでくつろぎや居心地のよさをクリエイトし、楽しさや面白味などを見いだしていらっしゃるんですか?

ミスター実は、私が一番重視しているのはクリーニングなんだ。

マダムあら~! 意外なところから球が飛んできましたわね(笑)。

クリーニングサービスで図るホテルの柔軟性

ミスター衣類のクリーニングサービスに対するホテルの対応力、これはビジネスマンとしては注目せざるを得ない事柄だよ。前にも話したけど、ジャカルタで、夜中に出しておくと朝にちゃんと仕上げて届けてくれるホテルがあった。気がきいてるよね。

マダム寝ている間にできあがるんですのね! 便利~。

ミスターそう、そのホテルに泊まるなら余計な服を持っていく必要がない。必要最低限ですんじゃうんだ。他にもあるよ。例えば出国が夜便で、日中にゴルフやジムで汗を流した場合。そのままウエアを荷物につめての長時間フライトって、やっぱりイヤだよね。

マダムにおいも気になりますし…。できたら洗ってからパッキングしたいですわね。

ミスターところが、たとえホテルのクリーニングに3時間で仕上がるエクスプレスサービスがあっても、受け付け時間にリミットがあるんだよ。遅くても15時、早ければ12時に締め切ってしまう。だから、深夜便に間に合うように夕方に出して、チェックアウト前に受け取る…というのは無理なんだ。

マダムそういうゲストに本当に都合のいい、ゲストファースト(笑)のサービスをしているところは本当に少ないですわよね。

ミスター大型ホテルやアメリカではまず不可能かな。なぜなら組織的に動いているから。でも、ヨーロッパとアジアの小さいホテルなら、ルームメイドへのチップ次第で何とかなることが多いんだ。

チップには意外な効用もある

マダムああ! ミスターがよくおっしゃる「ハウスキーピングと上手につきあうべし」というお話は、こういうところにつながるんですのね!

ミスター私は急ぎでクリーニングを利用したい時、電話でピックアップを頼むのではなく、自分でランドリーバッグに入れてスタッフのところに持っていくようにしているよ。そして渡したスタッフにチップを渡す。2ドルくらいでいいんだ。こういう下地をつくっておくと、イレギュラーでお願いしたい時に、無理を聞いてもらえることが多いんだ。

マダムまさしくチップ効果ですわね。

ミスターそう。客室に戻ってからくつろぐつもりでチップを置かずに朝食に行き、戻ったらすでに清掃が終わっていることがあるでしょう。そんな時は部屋の仕上がり具合を見てから廊下に出て、まだスタッフがいたら、わざわざチップを渡しに行く。このチップが活きるのは滞在最終日なんだねえ。すでに受け付けを終えたエクスプレスのクリーンングをお願いしたい、という時に頼りになるのがそのスタッフ。で、先に渡しておいたチップが効いてくると。

マダムそれが本当のホスピタリティというような気がします。

コミュニケーションでホテルはもっと楽しくなる

ミスターアジアとヨーロッパにはまだ可能性がある。アメリカは全然ダメだなあ。彼らは自分たちの権利とルールで仕事をしているから、柔軟性がない。誰でも平等にという点では徹底しているかもしれないけれど、やはりホテルにはフレキシビリティが重要なんだよ。

マダムなんといってもホテルは仮の住まいですし、1人ひとりが求めているものも異なりますものね。

ミスターだからこそ、チップは払いたくなるものなんだ。クラブフロアに滞在すると、17時からはラウンジでアルコールがサービスされる。でも15時に戻って来て「疲れた、ビールが一杯飲みたいな」と思っても、ラウンジにあるのはお茶だけ。そんな時に、スタッフにさりげなくチップを渡して「お願い」。これが効くとうれしいんだよね。

マダム「ありがとう」&ニッコリという、ちょっと共犯ぽい雰囲気や、特別扱いへのうれしさもあります。

ミスター人ぞれぞれだけど、金額にかかわらず喜んでくれると、こちらもうれしい。そういう人にチップをあげたいよね。

マダムサービスだからやってもらって当たり前とか、ただ期待して待っているだけでは何も始まらない。上手にコミュニケーションすれば、ホテルはどんどん楽しく心地が良くなるということですね。

ミスター居心地の良い空間をどうつくるか。それはゲストの心持ち次第ってことだね。

ホテル業界も面白ネタがいっぱい

マダムそういう話を聞くと、やっぱりワクワクしてきます。こうやって、ホテルの話だけで盛り上がれるんですから、やっぱりホテルは楽しいんですのよ。芸能人のウワサ話と同じで、ブランドがくっついた、離れた、直した、人気が落ちたとか。ネタはいくらでもありますもの(笑)。

ミスター実際に、いろいろ見て回るとなおさらね。まあ、最近はブランドが複雑化しすぎでワケわかんないし、第2次ブランディングブームが終焉に向かいつつあるとはいえ、いろいろ想像力をかきたててくれることは間違いない。

マダムそういえばシュレーガー&スタルクもしぶといですわね~。もう飽きられるんじゃないかと思うけど、まだまだニーズがある。

ミスター今度はマリオットとでしょう。スタルクのとんがった特徴は丸くなると思うけど、マリオットはデザインブランドを大切にしているから、面白いことになるんじゃないかな。

マダムスタルクのデザインはニューヨークとロサンゼルスの街が一番似合うし、ブティックサイズが最も魅力が発揮できるような気がしますけど…。

ミスター本来は、ああいうタイプのホテルは増やしてはダメなんだ。希少価値があってこそでしょう。特徴のあるところはチェーン化するとつまらなくなるに決まっているし、最初についたファンも離れてしまう。とはいえ、大衆化すると一般にも売れるからねえ。痛し痒し。ビジネスとは難しいものだよ(苦笑)。

高級ホテルはテーマパークと同じ!

マダムそう考えると、高級ホテルとテーマパークって似ていると思いません? みなさん、高いお金を払って非日常を求めに行く…。

ミスターふだんは経験できないこと、身近にはない家具や調度品、しきたり、ルール、空間、雰囲気…。高級ホテルは、それを体験できる楽しい機会に他ならないよね。だから肩肘張らないで、楽しめばいい。

マダムテーマパークだって、キャストと積極的に触れ合ったりするでしょう。ホテルのスタッフも、ファンタジー空間のキャストだと思えばいいんじゃないかしら(笑)。何も無理難題を吹っかけてくるわけじゃないですもの。

ミスタースタッフは誰もが、この時間を快適に楽しく過ごしてほしいという思いで接してくれるのだから、身構えなくていいんだよ。礼を失せず、上手に甘えて、いいゲストになることだね。うまくなじむことができれば、文字通り夢の世界が広がるよ。

マダムホテルというと、どうしても日常生活の延長として捉えてしまいがちですが、観光スポットやアクティビティそのものとカテゴライズした方がいいのかもしれません。

ミスターその方が興味と好奇心を持って挑める(笑)。「楽しい」って、そういう気持ちから生まれてくるものだよね。ホテルの楽しさは何でもアリ、自分で工夫するもの、そして視点を変えること。そうすれば、ホテル選びがきっと楽しくなるし、思い出深い滞在ができるようになると思うよ。

みなさん、いかがでしたか。ホテル自体は旅のツールのひとつに過ぎませんが、自分が興味を持つことで、いくらでも特別な空間になるものです。旅は楽しい。そしてホテルも、もっと楽しい。ぜひ、みなさん1人ひとりの経験や視点で、ホテルの楽しみ方を見つけていってください。

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