Vol.
122
バルト三国の可憐な小都市をめぐる:前編
例年にも増して慌ただしく過ぎていったこの夏、ヘルシンキを経由してラトビア、エストニア、リトアニア、ドイツ、スイス、フランスと、ヨーロッパをプチ横断する長い旅をしてきました。思いは募るものの、なかなか訪れる機会が持てなかったバルト三国。期待に満ちて降り立った中東欧(中欧なのか東欧なのか、時代とともにカテゴライズが変わってやっかいですね)の小国は、それを裏切らない美しくも可憐な国々でした。
「世界で最も美しい街並み」の見どころは
ラトビアは常にロシア、ポーランド、スウェーデンなどの大国の脅威にさらされ、あるいは支配下に置かれてきた歴史があり、ロシア語を話す人が三分の一以上いるとも言われています。私が首都リガに入って、まず感じたのが人々の顔に表情がないことでした。
政治的にも複雑な背景を持つせいなのか…と思っていたのですが、いざ話してみると何とも「いい人」ばかり。レストランのウエイトレスも、見た目はぶすっとしています。でも口を開くとサービス精神旺盛なのですね。例えると「田舎の人」。取っ付きは悪いけれど、話してみると素朴で陽気…みたいなね。
中世の面影が色濃く残るカラフルでかわいらしい街並みも、確かに「世界で最も美しい」と称される通りでした。必見は、旧市街は大聖堂や聖ペトロ教会に代表される教会建築、新市街ならずらりと並ぶユーゲントシュティールの建築群でしょうか。というか、ハッキリ言って見どころはそれだけ(笑)。リガは普通の人々が普通に暮らしている普通の町で、とりたてて観光客目当てのスポットがあるわけではないのです。
歩きやすさと物価の安さも魅力的
観光客のほとんどはヨーロピアン。中世の街そのものの石畳の道を、皆のんびりそぞろ歩いています。日本的に言えば、やはり昔懐かしい田舎をたずねてきた感じなのかもしれません。また、街がコンパクトで、1日ぶらぶら歩くのにちょうどいい規模なんですな。同じ石畳でも、区画が大きすぎるポーランドと比べると、はるかに歩きやすいのです。ちなみに日本人はほとんど見かけず、爆買い中国人の進攻も、まだバルト三国には達していないようでありました。
あまりに普通すぎるゆえ、気の利いたものを買いたいなら根気よく探さないと見つからないという欠点(笑)はありますが、リガの食事のクオリティの高さには驚かされました。特にカフェやビストロ。フレンチやイタリアンのフュージョン料理が盛んで、しかも安い!
大使館界隈のしゃれた店でのランチは、グラスワイン付きのプリフィクスで20〜30ユーロというビックリのお値段。パリやロンドンの同レベルの店なら、前菜の値段であります。ユーロに移行したとはいえ、この物価の安さは奇跡的。まあ、こんな状況は今だけでしょうな。数年後にはぐっと物価が値上がり、状況も変わっているはずです。
個性的なプチホテルに滞在して郊外にも出てみよう
リガ郊外の有名スポットといえば、リトアニアとラトビアの境界近くのシャウレイという街にある世界遺産の「十字架の丘」。ここは、処分しても処分しても十字架が集まってくるという不思議な場所で、形も大きさもさまざまな十字架が密集している様は圧巻です。リガからはバスで行けますが、シャウレイから路線バスを乗り継ぐため、スケジューリングがうまく行かないと丸1日の移動になってしまいますので、ご注意を。
時間を気にせずに過ごしたいなら、リガに数日滞在するのもいいですね。ホテルは中心部にも意外とたくさんあって、インターナショナルのチェーンはほとんど進出していませんが、3.5星〜4星の個性的なプチホテルが必ず見つかります。いずれもクオリティが高く、客室もゆとり十分。飾らないサービスも居心地がいいですゾ。
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