ミスターMのおいしい旅の話「次の旅はここへ行け!」
Vol.111

Vol.
111

スリランカを「見に」行こう

Heritance Kandalama

現地の友人から長らく誘いを受けていたスリランカに、 このほどようやく足を運ぶことができました。スリランカと言えば「カレー」と「紅茶」のイメージが強く、ちょっとインドと似たイメージを持つ人が多いかと思いますが、どうしてどうして。「光り輝く島」の神秘的な磁力に、私はいっぺんで魅了されてしまったのであります。

長い内戦後の復興の実態は

ご存知のようにスリランカは、1983年から続いていた内戦がようやく終わったばかりの国です。発端は人口の7割を占めるシンハラ人優遇政策に対する、少数派タミル人による反感。これが反政府闘争へと発展し、2009年5月に大統領が国会で終結を宣言するまでの26年間に、実に7万人以上の犠牲を出す悲劇となったのですね。

戦後の混乱がようやく治まってきた今、一丸となって平和と国力回復に向けて前進中のスリランカ。果たして復興の実態は……というと、反政府軍の本拠地となっていた北・東部地区はまだやや治安が不安定だそうですが、人々の表情は驚くほど穏やか。身構える必要は全くありませんでした。なんと言うか、視線に無遠慮なところがなく、 不思議な親しみを感じるのです。う~ん、なぜだろう。同じ仏教徒だからかナ(笑)。

実際に景気はやや上向いているようで、ビッグプロジェクトを目指して海外からの投資や人材流入も盛んです。たとえば車で6時間かかるコロンボからダンブッラへは、数年後にはハイウェイが完成して2時間弱で行けるようになるとのこと。ま、インフラ整備は往々にして時間がかかるもの。現時点では、とにかくどこへ行くにも時間がかかることを覚悟しなければなりません。しかしハイウェイですっ飛んで行ってしまうと、魅力的なローカルライフは眼に入らないことに……。ありのままを見るならば、やっぱり「今でしょ!」(笑)。

数千頭のゾウが集まるミンネリヤ国立公園へ

ところで、私はこのスリランカの旅で、見たいものが3つありました。ひとつめがこの時期にしか見られない、ミンネリヤ国立公園のエレファント・ギャザリング。ここはゾウのオアシスと呼ばれる場所で、7月から9月にかけて全土から数千頭にも及ぶ野生のゾウが大移動してくるのだとか! もう胸躍らせてジープで出陣したのですが……。

仕事の合間の2時間と限定され、その時間帯が野生動物の一番活動しない日中と、なんとも間が悪かったようで、数十頭の群れを目撃しただけ。それでも小柄でやさしいインド象は、間近に来ても獰猛なアフリカ象と違い安心して眺められます。なんともありがたいサファリ体験でした。ちなみにスリランカには20カ所以上の国立公園と、100を超える自然保護区があります。これも島の大きさを考えたら驚異的。ネイチャー派にはたまらない魅力溢れる島でしょう。

感動的な仏教遺跡の数々

2つめの目的は、荘厳なる仏教遺跡の数々です。中心観光地は文化三角地帯。特に世界遺産でもあるダンブッラの石窟寺院がすごかった! 居並ぶ仏像の中には日本のお地蔵さんみたいな地味系があるかと思えば、色黒ギョロ目のインド風味のものも。2200年以上という歴史の変遷がよくわかります。規模も保存状態も素晴らしいのひと言。私は時間を忘れて見入ってしまいました。

他には、仏様の左の犬歯を祀ってあるというキャンディの仏歯寺が、とんでもない人出で驚きました。一生に一度どころか、毎日拝みに来る場所なんでしょうね。 祭事もドンチャンドンチャン賑やかで、 どことなくヒンドゥーに近いものがあります。その歴史と背景は新堂の歴史絵画で実に分かりやすく解説され必見です。おっと、1400段の階段を登ってたどり着く歴史的な岩上宮殿遺跡シーギリヤ・ ロックも忘れてはいけません。その雄大な姿を遠くから眺めるだけでも感動的ですゾ。

世界に名だたるバワ建築に泊まりたい!

そして最後にして最大の目的が、ジェフリー・バワのホテルです。今回は念願かなって、彼の最高傑作とされるヘリタンス・カンダラマに泊まることができましたが、ウーム、さすがというか圧倒的と言うか……。建設に反対した地元民の反対を鎮めるべく、普遍性に富むデザインでありながら自然との融合を条件に造られた巨大な建造物は、まるで緑の中にすっぽり収まっているかのよう。館内にも自然そのままの姿がふんだんに残されています。

スリランカにはバワの手がけたホテルが多数あり、日本からも見学をメインとしたツアーが組まれるほどの「名物」です。建築やホテルデザインにはひとかたならぬ興味を持つ私としては、全バワ建築のホテルを見て、泊まってみたい! そのためだけでもスリランカを再訪する価値がある、と心から思いました。

1回では 足りない見どころ満載の国

大自然あり、世界遺産あり、バワ建築ありと、見どころ満載のスリランカ。しかも先に述べた通り、点在するスポットを移動するのが大変ですから、とても1回や短期間の滞在で全体像を把握することは不可能です。出かけるのなら欲張らず、無理をせず、定点を決めてその周辺をじっくり見て回る。そうして少しずつ走破していくのが一番理想的でありましょう。私も、そのつもりです。

花鳥風月

ウマ辛すぎるスリランカのカレー

スリランカと言えばカレー。そうなんです、特別な外食をしない限り、普通に毎食カレーが出てきます(笑)。これがメチャクチャうまい。でもものすごく辛いんですな。ゆえにバクバク食べられはしないけれど、その独特のコクや甘さ、うま味は、インドともタイとも全く違う。何度食べても飽きない、そしてつい食べたくなる中毒性があります。

一口にカレーと言っても、いろいろな種類がありますが、私が「絶品!」と感動したのがアーッパ、別名ホッパーです。これは米粉をココナッツミルクと混ぜてクレープ状にしたもの。お椀のような形に焼きあがるので、真ん中に卵を落としてカレーも加え、まぶしながらちぎって食べます。端の方はカリカリしていて香ばしく、真ん中はしっとり。うーん、うまいっ。朝食の定番だそうですが、いまだに忘れられない一品です。