Vol.
100
年頭所感:訪日ブームのいま
みなさん、明けましておめでとうございます。相変わらず曇天の世の中ではありますが、明るいことに目を向け前向きな気持ちで新しい年を過ごしましょう。ボーダレスワールド、グローバリズムが常識化したいま、「国家とは何か?」を問われる難しい時代になりました。円高で満喫した海外旅行も円安への転換を迎え、旅行の仕方やあり方を考えなくてなりません。そんな大きなうねりを「進化」と呼べるのかという疑問はありますが、アンチ・エイジング的な抵抗ではかなわない、「変化への対応」が求められていると思います。
日本は幸運な国か
1990年刊行の大前研一氏著書「ボーダレスワールド(国境なき世界)」に、19世紀的な国民国家の枠組みが、やがて崩壊に向かう物理的必然が警鐘されています。科学、交通、金融、通信の発達でヒト、モノ、カネ、情報が国境という地理的な国境線(ボーダー)を飛び越え、国境にこだわったオペレーションをする企業は狭い枠の中で死に絶えるしかない、と。
そしていまそのボーダレス経済が国家運営をゆさぶるまでの時代となりました。国境を飛び越えて経済活動をする多国籍企業は、どこの国でモノを作ればコストカットできるのか、どこでビジネスすれば節税できるのかを考えるのが必然の時代です。
とくに切実なのは陸続きで異なる民族、宗教、文化に接している国々です。文字通り血を流しながら価値観を守る戦いの日々・・・。そんなシビアな世界が日常であるのが「大陸」の国々、人々です。昨今の世界の出来事を見るにつけ、四方を海に守られた「島国」日本にほのかな幸運を感じはしませんか? グローバライゼイションによる弱肉強食の経済侵入が、ローカル文化を抹殺していくという深刻な問題から、「島国」日本は地理的、時差的に助かっているのかもしれないというのが現在の実感です。
日本文化と日本人の再認識
地図の端っこに位置する何とな~く遠い極東の国、実態ももうひとつ良くわからない・・・そんな日本が、いま世界から注目されています。ビザ政策緩和、円安効果のおかげで、あっという間に1000万人台に乗った訪日客のおかげで、日本、日本文化、日本人が世界中から再認識、注目される時代がやってきたのです。原動力となったのがインターネットやSNS等々。その情報発信力、伝播力、共有力のパワーを見過ごすわけにはいきません。
ところが、日本人の奥ゆかしさか自己主張のなさか、はたまた語学力不足等からか、日本・日本人をよく知る「外国人」は、実は少なかったというのが実情です。もちろんこれまでも興味はあったし、多少の知識はあったことでしょう。しかし、やはり見ると聞くとは大違い。「ジャパン素晴らしい!」「日本文化クール!」「日本人ステキ!」という嬉しい言葉が21世紀の今日、時空を超えて世界中を駆け巡っています。
そう、「違う」ことはそれほど素晴らしいのです。そのことを訪日客が教えてくれています。異文化体験のかけがえのなさ、これこそが旅のダイナミズムです。しかし一方、グローバリズムのもと、世界の絵が塗り替わりつつあるのも事実です。どこに行っても同じブランド、同じ店、同じレストラン。それじゃ、わざわざ足を運ぶ興味も価値も、半減するじゃないですか。
人のふり見て我がふり直せ
異文化を受け入れるには、無知なままではいけません。「知る」「学ぶ」必要があります。明治維新以降、何もかもがあまりに違う外国への憧憬からか、異文化崇拝ブームもありました。そんな時代から約100年。誰もが外国に行ける時代になり、「海外」は日常となり、またライフスタイルとなりました。日本人はつくづく受容性、許容性の高い民族と感じます。おそらくみなさんも感じているでしょう。現代の日本人は異文化に興味を持ち、また非常にスムーズに受け入れられるようになりました。それが海外旅行を牽引した力でもあったわけです。
そしていま、海外から日本に人々が押し寄せてくる時代にやってきました。中国団体客の言動云々とメディアなどで見聞きすることがありますが、60年代、70年代のニッポンジンも、まったく五十歩百歩でしたよ(笑)。人のふり見て笑っていてはいけません。我がふりも反省すべきなんですね。
日本って遅れているの?
最近の調査でわかった、訪日客の最大の不満。何だかおわかりですか? ズバリ英語表記のなさ、語学対応力の低さです。痛いところをつかれましたなあ(笑)。やはり日本はまだまだ島国なんですね。だとすれば、いままさに日本は開国の時代を迎えているのです! みなさん、いまこそコミュニケーション力を付けなければなりません。「ニコニコ笑顔で応対してくれるけれど、質問には答えてもらえない」「要望を聞いてもらえない」「話が通じない」etc。このままではやがて訪日客の熱は冷めていきます。
日本は未開の地ではなく立派な経済大国であり、教育が行き届いている国なんです。世界にはそう認識されているのです。「コミュニケーションできない国」ではすまされないのです。いまや東南アジアではほとんどの人が英語を解し話します。知る、学ぶ、知的好奇心を満たせる環境をいまこそ築く必要があります。
なんですって、日本には言葉などなくても「おもてなし」があるって? 甘えていてはいけません! コミュニケーションなくして本当の相互理解などありません。訪日して良い印象が、良い思い出ができた人々が増えれば、知日、親日な人々が世界に広がり、ますます日本も日本人も正しく理解されることにつながります。そうすれば、あなたが他国に訪問した時にも良い厚意、おもてなしがあることでしょう。それこそが旅のもたらす大いなる滋養力です。
これからも世界中の人々がどんどん日本にやってきます。誰にも例外なく日本のおもてなし文化を体験してもらい、「日本は本当に素晴らしい!」と思ってもらえるよう、また日本文化や日本人に共感してもらえるように、私たち一人ひとりが相手の心に響くコミュニケーションを心がけようではありませんか。世界のすべての人々に幸福と平和を、祈りをこめて・・・。
花鳥風月
2015年おすすめデスティネーション
円安が続く昨今、海外旅行の必然的にセーブという人が多いかもしれませんが、異文化体験の魅力にはあらがえないですよね。定番の人気デスティネーション再訪も悪くありませんが、今年は思い切って新たな境地を切り拓いてみませんか。私のイチ押しは北欧と中欧。先に訪ねたクロアチアやスウェーデンはもちろん、ヘルシンキを起点として海路も利用しながらエストニアやサンクトペテルブルクを周遊するのんびりした旅も、いつかは実現したいと思っているルートです。
いや、「いつかは」などと悠長なことは言っていられないかもしれません。例えば、人気力士だった把瑠都の故郷として一躍有名になった国エストニア。首都タリンは「現存するおとぎの国」とも称されるほど牧歌的で美しい都市で、1999年に旧ソ連圏から初めてユーロ傘下となりましたが、今またウクライナ情勢を巡りロシアと緊張関係に・・・。今後の動向は予断を許しません。「気がついたら、もはや訪ねることのできない国」にならぬよう、改めて世界平和を祈るのみであります。
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