Vol.
99
海外旅行とグローバライゼーション(前編)
イギリスからスウェーデンを経由してドイツを訪問してきました。ロンドンは肌寒いながらも快適でしたが、ストックホルムでは初雪に遭遇。といっても、雪がチラホラ舞うようなロマンティックな雪ではなく、目の前が真っ白になるほどの吹雪やミゾレというハードなもの。これが北欧の冬なんですねえ。それに比べて日本の季節の変わり目の何と穏やかなことか。まだ治らない時差ぼけと格闘しながら秋から冬への移り変わりをしみじみ味わっています。
ストックホルムのホテル事情
みなさんはスウェーデンというと何を思い浮かべますか? ノーベル賞、世界遺産であるドロットニングホルム宮殿、そしてイケアや H&M発祥の地等々、おしゃれで近代的でアカデミック・・・そんなイメージがありそうですね。私はと言うと「ホテルが取れないところ」(笑)。いや、ホテルの数はそこそこあるのです。しかし年間を通じて、どうにも予約が困難なのです。
先にもあげたアカデミー賞を筆頭に、年がら年中各種高クオリティで集客力のある国際会議や学会が開催されているのがその理由。それだけの集客があるのに、大規模ホテルは数えるほどしかありません。絶対的に客室数が足りないのでしょう。旅行を考えているなら、ホテルはとにかく早めに押さえるべきかもしれません。
不思議な魅力に満ちた町
今回の滞在はわずか2日間だったため満足な散策はできませんでしたが、町並みの美しさには感銘を受けました。トラディショナルコンテンポラリーとでもいいましょうか、伝統的なヨーロピアンスタイルとモダンな北欧デザインが見事に融合し、実に洗練された雰囲気を醸し出しています。
時期的なものもありますが、歩いているのは地元の人ばかり。しかも中高年が多いのですが、みなさん何気なくお洒落なのです。そして気難しく無愛想に見えても、話してみると親切でおおらか。町も人も旅人を緊張させない、不思議な魅力にあふれています。
タクシードライバーに聞いたところ、観光のハイシーズンは何といっても夏。6月末から9月までの時期は最高だそうで、特に8月は空が青く澄み渡り、気温も爽快。リラックスするには申し分のない避暑地だと力説していました。ウーム、次回はグルメも含めスウェーデン各地の素晴らしさをぜひ満喫してみたいものです。
ロンドンで世界について考える
さて、話はその前のロンドン滞在に戻ります。先頃スコットランドの独立問題で大揺れに揺れたイギリスですが、それ以上に首都ロンドンで熱い論争が続いているのがユーロへの加盟可否。キャメロン首相は断固反対を貫いていますが、それは国益に反するのでは・・・と言う声が高まってきているようです。今回も、ヒースローに到着しパディントン駅でタクシーに乗ったとたん、ドライバーが聞いてきました。「あなたはユーロ加盟をどう思うか」。議論好きなイギリス人らしいイキな接待ですな(笑)。
私はキャメロン首相に賛成。というかユーロ拡大に反対、アンチ・グローバリズム派なのであります。確かに地続きの国がユニオンになるのは便利ですが、人もモノも自由に行き来できるようになった結果、そこに待っているのは何か・・・そう、大資本の侵攻です。どこにいっても同じコンビニエンスストアがあり、ファストフードがあり、ファストファッションのショップがある。これって、面白いですか? 本当に歓迎すべきことですか?
「オリジナル」が消えていく世界
海外旅行の楽しみは、その国にしかないもの、その国独自のカルチャーに触れることですよね。ところが今、世界中で「オリジナル」がどんどん消えつつあります。大資本がローカルのカルチャーを一掃しているのです。もちろん駆逐されてしまう側にも、生存能力が低い、経営能力がない、現代の経済状態に合わないという現実的な問題があるのでしょう。
だとしても、同じ店が世界中にある必要はないと思いませんか。そこにあるからこそ、わざわざ出かけていく価値があるのであり、世界がひとつの価値観に染まってしまうのはつまらないと思いませんか。
最近、日本観光がブームになっているのも、日本がまだグローバライゼーションの波にあまりさらされていないからだと思います。日本の独自性がたくさん残っているんですね。浅草に行ったら仲見世があり、アメ横にはアメ横の雰囲気があるように、「昔ながらの姿」文化がちゃんと生きているんです。となれば外国人旅行客が熱狂し、興奮するのも当然です。自分たちの国にはないものばかりなんですから。
日本人のグローバライゼーション化
ところが、日本人自身はその素晴らしさがわかっていないような気がするんですな。どうやらグローバライゼーションに意識をおかされ始めていて、海外でもコンビニエンスストアに行って安心し、ファストファッションを買い、ファストフードを食べて満足してしまっている・・・そんな傾向が強まっているように思うのです。あちこちで食べ比べてみたい、どんな風に違うのか知りたいと言う興味や関心で足を運ぶのは悪いことではありませんよ。しかし、ある程度納得できたら、やはり触れたいのは「土地モノ」でしょう。それが旅というものです。
日本という国が、せっかくこんなに豊かになったのに、教育が隅々まで行き届いているのに、そして世界に自慢できるオリジナルの文化を持っているのに、なぜ、そこに住んでいる私たちが画一的で、どこにいっても同じモノを求めてしまうのでしょう。私は、その背景には日本の教育のあり方が深く関わっているのではないかと考えています。そして海外旅行も、それと密接に結びついているのです。・・・と、この考察についてはまた次回にお送りします。本年も本コラムをご愛読いただき、誠にありがとうございました。また来年も、なにとぞよろしくお願いします。どうぞ世界の平和と幸福を祈りながら越年ください。よいお年を。
マイフェイバリットホテル
ビジネスに最適なヒルトン ストックホルム スルッセン
労働者の町からトレンディエリアに変身したというセーデルマルム島。その北に位置するヒルトン ストックホルム スルッセンは、ちょっとユニークな建物でした。高台の坂道に横たわるように建てられているため館内は複雑な動線になっていて、エレベータに乗るのにも一苦労。客室のドアも狭い廊下に向かっての外開きという、実に大胆な造りでありました(笑)。
内装は客室によって多少が異なるようですが、私が滞在したデラックスは入室して左手にバスルーム、突き当たりにワーキングデスク、右手にベッドという横長の珍しいレイアウト。2人だとやや窮屈かナというサイズですが、コンパクトかつ機能的にまとめられ、採光はいいしカラースキームも軽快と、なかなかの居心地。ゲストのほとんどはビジネスマンのようで、8時に朝食に出かけたら満席、9時にはガラガラでしたねえ。地下鉄駅からは徒歩約5分とアクセスも良好ですが、問題はその道路。スーツケースを転がしたら、あっという間に壊れそうなデコボコの石畳なのであります。ま、これも風情ですな・・・。
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