ミスターMのおいしい旅の話「次の旅はここへ行け!」
Vol.72

Vol.
72

近頃ホテルに関して思うこと

The Okura Prestige Bangkok

マダムヨーコと入れ替わるように、パリをゲートウェイにヨーロッパへ行ってきました。現地の知人からもマダムからも「フランスは気温が低いですよ」と聞いていたので万全の対策で。確かに朝晩はちょっと肌寒いかなという感じでしたが、日中はかえって過ごしやすく快適でした。しかし今年のヨーロッパはユーロ安とオリンピックの影響か、エアもホテルも確保するのが大変でした。みなさんの夏休みはいかがでしたか?

エキサイティングなバンコクのホテル

先日久々にマダムと会った折、「最近どんなホテルが面白いか」という話題になりました。マダムが目をつけている(笑)のはバンコクだそうで、「アコー系の気合いはハンパじゃない」のだとか。そういわれてみると、うむ、確かに。ホテルオープンのラッシュはいまだ止まずの状態ですし、マダムが推すアコー系はもとより、以前も紹介したハンサーやオークラなど、これまでとは明らかに毛色の異なるホテルが登場していますな。

たとえば、ソフィテルのアッパーカテゴリーとなる「So」。クリスチャン・ラクロワのデザインコンセプトに基づき、自然界の5元素(水、土、火、金属、 木)をテーマに展開。ルネッサンスを彷彿とさせる美しいユニフォームをはじめ、話題性は抜群。同じくアコー系Mギャラリーの2軒目ミューズも、懐かしき「王様と私」のクラシカルテイストとモダンヨーロピアンテイストのフュージョン。目を見張るような空間が展開しています。ホテルフリークなら、写真を見ただけで「泊まってみたい!」とそそられること間違いなしです。

ホテルは「進化」しているのか!?

ファッションに流行があるように、ホテルのデザインにも流行があります。15年前に突如広まったのは、白やブラウン系のカラースキームと、徹底的にシンプルな家具というパターンのミニマルスタイル。モダンでスタイリッシュなムードが出るだけでなく、メインテナンスもしやすいという利点がありました。その後はミッドセンチュリー風の家具をあしらったレトロモダンなスタイル、重厚な色合いと機能的な家具を組み合わせたアーバンスタイル、さらにそこに快適性を加味したアーバンリゾート風と、ホテルのデザインも時代とともに「進化」しています。

しかし私は、その「進化」が、ちょっとアヤシイ方向に行っているような気がしてならないのです。うっとりするようなホテルのショット、あっと驚くようなロビー空間、最高級の家具に最新の機器・設備。美しい! 素晴らしい! でも、そんなゴージャスなゲストルームで一晩過ごした後の感想は、たいていが 「ウゥ・・・(苦笑)」なのであります。

ここはショールームか!?

私が思うに、快眠を約束してくれるコンフォートベッド、使い勝手の良い美しいバスルーム、居心地の良いリビング。これら3元素が美しく快適に調和した空間、それこそがホテルの客室の理想、あるべき姿じゃないでしょうか。ところが昨今のインテリアは奇抜というか、見映え優先のデフォルメされたようなデザインが多いのですな。ユーザビリティ、すなわち使う人のことを全く無視したような部屋が実に多い、多すぎるのです。見ると使うとは大違い。その恐るべき落差に直面し、思わず一言「ここはショールームか!?」。

ライティング&バスルームにもの申す

個人的にまず苦言を呈したいのはライティング。ライティングとは光と影の芸術であるはずなのに、あまりにも疎かにされすぎていると思いませんか。ひと昔前はある程度のクラスのホテルなら、やさしい光の間接照明、フットライト、調光機能が普通にありました。ところが昨今はエコブームのあおりか、枕元のLEDスポットライトのみ。真夜中に目覚めた時に、あんな強烈な光源は勘弁です。しかも導線となる光がないから、結局メインの照明を点けないと、バスルームに行くまでにつまづいたり、ぶつかったり。さらに、そのライトのコントロールがわかりにくいときた日には・・・もう絶句です。

バスルームも同様。バスタブはなくても仕方ないのですが、その分シャワールームの快適性、使い勝手をもっと考えていただきたいですねえ。バスルーム自体のスペースはゆったりしているのに、シャワーブースはまるで付け足し空間というか・・・とにかく狭すぎる! バスアメニティを置くスペースも石けん1個がせいぜいだったり、さらにトビラが外開きになっていたり。アンビリーバブル! 内開きでピタッと閉まる構造でないと、床が水浸しになるじゃないですか。素人でもそんな構造は「???」と思うでしょう。またレインシャワーなどのパーツにこだわっても、快適な水圧と水量が確保されていないなど、問題は山積しております。

ハードは裏切らない

ホテル業界は「ロッジングインダストリー」と呼ばれ、ビジネスの鍵を握るのは「Lodging」という通りハードでした。しかしリッツが「クレド」を提唱した 頃から「ホスピタリティインダストリー」、つまりサービス等ソフトがそのメインとなり、「クレド」や最近では日本的な「おもてなし」を理想に、世界各国のホテルが従業員教育に血道をあげるようになりました。確かにサービスのスタンダードがアップしたことは間違いありませんし、気持ちよいホテルステイが楽しめるようになりました。しかし所詮は人間がやること。オールウェイズand/orパーフェクトではありません。

いくらパーソナルサービスといっても、そのスタッフの気分や置かれた状況、ゲストとの相性によっては「できないこと」はたくさんあります。でも、ゲストのユーザビリティをしっかり考えて造られた客室、ハードは裏切りません。もちろん、ホテルだって「進化」していかなければなりませんが、見かけだけの美しさ・奇抜さが優先されたり、経費削減の名のもとに、快適性や使い勝手が犠牲にされるのは、いかがなものかと思うのです。ソフト万能な時代だからこそ、声を大にして言いたい。ホテルはやはりハードあってこそ、と。

快適空間はユーザビリティあってこそ

そうなんです。昨今のデザインの進化道は、イメージに走りすぎて非日常的すぎるのです。「レア」「サプライズ」「シャープ」は結構ですが、人間味というかやさしさが足りない。デザイナー諸氏、ユーザビリティあってこその快適空間ですゾ。原点回帰すべき部分があるのでは、と思わずにいられません。ホテルが追求すべきは「流行」ではなく「究極の快適、普遍性」じゃないですかねえ。やはり「気持ちよかった。またあのホテルに、あの部屋に泊まりたい」と思わせてほしい。ですから業界に関わる方々だけでなく、新たに参入しようと考えている方々にも私は望みたい。時代の流れを追うことばかりを考えず、本質を外さないホテル造りをお願いします、と。

花鳥風月

花鳥風月/ホテルバウチャーは不要か

スマートフォンの浸透にともない「eチケットやホテルバウチャーはPDFに落として持参。チェックインの際にそれを提示すればいいのだから、プリントアウトは不要では?」という意見がチラホラあがっているようです。ホテルによってはパスポートだけで手続きが済んでしまい、ホテルバウチャーを求められないこともありますよね。私自身、ほとんどバウチャーを出したことはありません。しかし、これは何かあった時に自力で対応・交渉できるかどうか、がポイントなんですな。

たとえば、スマホでバウチャーを提示したら、「それをホテルのアドレスに転送してほしい」「プリントアウトで提出してほしい」と言われる可能性もあります。 eチケットにいたっては、プリントアウトを見せないとセキュリティを通過できない空港もありますしね。スマホとPDFは便利でも、対応は国によってまちまち。よって、現時点ではeチケットやホテルバウチャーは、トラブル回避のために必ずプリントアウトをしておくべし、というのが私の見解。焦らず騒がず、 データOKが国際基準にはなる日を待ちましょう。