ミスターMのおいしい旅の話「次の旅はここへ行け!」
Vol.33

Vol.
33

5ツ星ラグジュアリーホテルって本当に快適ですか?

Mandarin Oriental Hyde Park London

景気はまだまだ世界的に低迷が続いていますが、円が強みを取り戻しつつあることや、燃油サーチャージが値下げからついに廃止されるにあたり、今年の夏は久しぶりに海外旅行が盛り上がる・・・かと思いきや。またもや新型インフルエンザに水を差されてしまいました。このウィルス自体はさほど凶悪ではなさそうですが、変異する可能性ってのがイヤですねえ。ある程度見通しが立つまでは、海外渡航を自粛なさる方も多いことでしょう。せっかくですから、この機会に改めて海外に想いを馳せる読み物などで、夢をふくらませてはいかがですか。

ラグジュアリーホテルを生み出したのは貴族だった

今日はまずは簡単な質問から。あなたは海外旅行で5ツ星もしくはそれ以上のラグジュアリーホテルに泊まったことはありますか? おそらく半数以上がイエスとお答えになるかと思います。では、次の質問です。そのホテルで心からリラックスし、快適に過ごすことができましたか? さあ、この答えはどうでしょう。こちらはおそらく、ほとんどがNOかもしれません。いいホテルだった。豪華だった。朝食がおいしかった。でも、リラックスできた、楽しむまではいたらなかった。そんな思いで帰国し、「ああ、我が家がイチバン!」かも知れませんね。

なぜ、至れり尽くせりの5ツ星ホテルで私たちは自宅のようにくつろげないのか。その背景にあるのは単なる文化の違いや民族性だけではありません。それを形成してきた「歴史」こそが、大きな役目を担っているのでしょう。香辛料などを求め領土拡充に執着した支配階級が未踏地開拓をした時代から、近代において「旅」を創造し、商品化への道筋をつけていったのは、上流階級、王侯貴族を筆頭にしたいわゆる現代の富裕層だったのですね。彼らは、中世から文化、芸術、音楽などに日常的に親しみ、またパトロンとして擁護し造詣が深い人達も多く存在しました。それゆえに、大変好奇心も旺盛で、探検や挑戦を試みる人達も多くいました。

彼らの旅は、それは大仰なものでした。中世では何頭もの馬車をたて、従者をぞろぞろ引き連れての道行きです。中には毎日どころか毎食ごとに衣装を着替えるのは当然、お茶も湯浴みも化粧も就寝も、全て領地のパレスやキャッスル、シャトーにいるかのごと・・・ですからね。やがて、王侯貴族は避寒避暑の目的や、嗜好趣味収集から権力の象徴でもあった「ヴィラ」と呼ばれる別荘を各地に建設所有し、同時に不便を解消していったわけです。ホテルの宿としての歴史、発展と相違する、そう、これこそがいわゆる現代のラグジュアリーホテルへつながってきたのですね。

現代まで受け継がれているルールとマナー

領地内はもちろん、ヴィラ逗留で必要なのは、ハード面では場合によってはおのが権勢や趣味嗜好をアピールする建物と豪奢な内装や調度品、ソフトとしては全てを怠りなく取り仕切る執事(バトラー)、要求があれば24時間望み通りの料理を提供するコック、馬車の手入れを行う御者や馬夫、身の回りの世話をするメイド等々・・・どうです、御者や馬夫がベルマンやエンジニアに変わっただけで、全部、現代のラグジュアリーホテルに置き換えることができるではありませんか。

そんなヨーロッパ上流階級の旅に対する考え方は、移動手段が船になり、鉄道になっても、そして飛行機が登場しても受け継がれていきました。しかし宿泊施設は商業化し、基本的に誰でも利用できるようになったとはいえ、そこには王侯貴族の時代から脈々と受け継がれてきた暗黙のルールが厳然として残っており、求められるマナーや立ち居振る舞いがあるのです。要するに貴族のライフスタイルを垣間見る場、シミュレートする場、それがラグジュアリーホテルというわけです。

そういう環境、教育を受けてきたヨーロッパ人は、ラグジュアリーホテルに滞在するのに何の気負いもとまどいもありません。だって、いつも自宅でしているようにすればいいだけのことですからね。そして、そうでない一般庶民、大多数の人は、よほどのことがない限り、ハナからラグジュアリーホテルに泊まろうなどと思いません。憧れはあっても、身分不相応なところには滅多に出入りしない。これがヨーロッパ一般の庶民感覚であり、5ツ星やその上のラグジュアリーホテルが、現代においてもなお別世界を維持堅持している背景です。

日本人が高級ホテルでくつろげないのは当たり前!?

ならば庶民以上に、「暗黙のルール」やら「求められるマナーや立ち居振る舞い」が理解できないのは誰かといえば、ヨーロッパと同じような社会階級制度が明治維新によって崩壊し、GHQの占領とともにアメリカ文明に染まっていった現代日本人です。新天地を求め平等と合理性を追求するアメリカ文明に馴染みきったアメリカ人もおおむね同様です。先進国の仲間入りを果たし、GDP世界第2位の経済大国になった今も、そのような貴族的ライフスタイルははるか遠くに忘れ去られ、学校でも社会でも学ぶ機会がないのですから、お金だけはあるゾー、と鼻息荒くラグジュアリーホテルに乗り込んでみたところで・・・。

まあ、ちゃんとしたホテルなら露骨に態度には表したりしませんが、慇懃無礼というか、雰囲気に馴染めない、そういう冷ややか?な空気は本能的に察知してしまうもの。これが、居心地の悪さや、今ひとつ楽しめないという気持ちにつながってしまうのでしょう。だからといって、日本人はファーストクラスホテルまでで満足していろ、というのではありませんよ。せっかく大枚をはたき、思い出に残る滞在がしたくて、私たちはラグジュリーホテルを選ぶのですから。では、どうしたら大切なゲストとして温かくもてなしてもらえ、また自分も楽しく快適な滞在ができるのでしょうか。今回の背景問題を受け、私たちがしてしまいがちな失敗やスマートなトラベラーになるためのヒントを、これから何回かにわたってご紹介していきたいと思います。

おっと、最後に宿題です。旅行用のバゲッジでルイヴィトンなどの高級ブランド品を選ぶメリットは何だと思いますか? 謎解きは次回のコラムでいたしましょう。

教えて!ミスターM!

ランカウイのリゾートに関する追加情報

読者のSさんより以下のご質問をいただきました。「いつも楽しく拝見しています。夏にタンジュン ルーに行きたいと思っていますが、リニューアル情報はどこにもでていません。現在のカテゴリーのほかに出てくる可能性があるのでしょうか」

いつもご愛読ありがとうございます。以前のメルマガで紹介しましたが、ランカウイでは、ザ ダタイ、タンジュン ルーの牙城だった北部エリアにフォーシーズンズが進出したことにより、高級リゾートアイランドへの階段を着々と上っています。タンジュン ルーは客室カテゴリーの追加や変更はないようですが、数年前からレストラン改装やスパ、プールの増設など、パブリックエリアの強化に力を注いでいます(ちなみにプールヴィラを増設したのはザ ダタイです)。個人的には、オン・ザ・ビーチレストラン「サフラン」は、ランカウイ屈指のワインリストがあると思います。トワイライトからサンセットまでの時間は特に美しく、ぜひご滞在の際には足を運んでみてください。またランカウイは免税の島なので、お土産にワインを購入するのもおすすめです。

花鳥風月

ドバイで超VIPと接近遭遇

先日、ドバイで行われた旅行博に参加してきました。ドバイは破産状態ながらも、大規模開発はいわば「国家百年の計」、まさに国家事業。投げ出すわけにもいかないので、スローダウンしつつも着々と動いているといった状況でした。親ともいえる存在の堅実なアブダビが後ろ盾となっているのも安心材料のようです。感心したのは、非常にツーリズムを大切にしているなあということ。ドバイ首長であり、「ドバイ株式会社最高経営責任者兼会長」ともいうべきムハンマド・ビン=ラーシド・アール=マクトゥーム首長が2回もご降臨。アラブ諸国のブースをひとつひとつ回って激励鼓舞する姿には、アラブ人だけでなく私も大感動。人々が何重にも取り巻き、カメラを手に必死で追っかける姿は、大名行列さながらでした。うーん、どこぞの存在感の薄いプライムミニスターとは格が違う・・・。

アラビア人達の大群衆の中、狭い通路から遠目に眺めていたところ、御大が突然きびすを返して私の立っている通路へ! なんと1メートルと離れていない至近距離でご対面の光栄に。眼が一瞬合っただけとはいえ、その瞬間には無意識に胸に手を当ててしまいましたっけ。ピーター・オトゥール演じる名画アラビアのロレンスに感動し、今も眼に浮かぶあの美しい名場面の数々に、アラビアという地に憧れた半世紀近い遥かな遠い時間がよみがえった瞬間でした。