ミスターMのおいしい旅の話「次の旅はここへ行け!」
Vol.2

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2

アマルフィ海岸をめぐる南イタリア、至福のドライビング

NH Collection Grand Hotel Convento di Amalfi

フランスならパリ、イギリスならロンドンと、各国には旅人が集中する代表的な都市があります。しかしイタリアに限ってはこの法則があてはまりません。特に個人旅行者に関して言えば、生粋のミラノっ子ですら行ったことのない小さな町にすら、熱烈なファンがいるのです。かくいう私もその一人。今回は南イタリア、アマルフィ海岸の珠玉の都市をめぐる旅への誘いです。

その美しさをじっくり味わうなら車がベスト

旅の基点となるナポリで、まず手配したいのがレンタカー。もちろんバスや鉄道でもアクセスは可能ですが、車なら気が向いたところに自由に立ち寄れるだけでなく、何よりも「イタリアの風」を肌で感じることができるのです。私はワーゲンのワゴンタイプをチョイス。本当は脇に美女を従えてメルセデスのオープンカーでぶっとばしたいところですが、気候や移動距離を考えて無難な選択をしてしまいました。美女については・・・調達不可能であった、とお茶を濁しておきましょう。

日程はゆっくりと、気ままに自由に

初日はナポリからポンペイへ。まずここで1泊。その後、西進してソレントに1泊。ここから青の洞窟、カプリ島ですが天候不順でパス。アマルフィコーストを、のんびりと東進してポジターノなどを散策しながらアマルフィに入りました。車窓を通り過ぎていく小さな村々の美しいこと!ギリギリまで石壁が建ち並ぶ中世の趣そのままの狭い道、カラフルなジェラートの屋台、みずみずしい野菜を盛り上げた露店、テラコッタ色の肌を惜しげもなくさらす麗しのシニョーレ・・・目に飛び込んでくる風景の全てが「ああ!イタリア!」。車を停めては感慨にふける私。時間に縛られる旅ではこうはいきません。思うままに時間を使えるのは車あってこそ。もしかして「もう、また停まるの!?」などと野暮なことを言いそうな美女よりも、車ははるかに快適なパートナーかもしれませぬ。

スリリングな海岸線を抜けてアマルフィへ

アマルフィコースト沿いの道路は世界でも有数の美しいドライビングコースですが、イタリア人の運転はオソロシイ。よくもまあ、こんなカーブをあのスピードで走り抜けるものだ、と度肝を抜かれること請け合いです。アマルフィコーストの真珠と呼ばれるポジターノで散策した後、目的地アマルフィに到着したとたん、冷や汗はすうっと引いてしまいました。かつては海賊が活躍したというここは、断崖にへばりつくように建築物が造られた要塞都市のよう。そして私が滞在したホテルはルーナ コンベント。というより、ここに泊まりたくて車を走らせてきたのです。

ルーナ コンベントは12世紀には修道院だった建物を改装し、世界中から芸術家や著名人が訪れる有名ホテル。入り口は断崖に設けられた専用のケーブルカーのみ。この見事な演出にもノックアウト寸前!!レモンの木が生い茂る中庭のテラスに腰を据え、名物のレモンチェッロを楽しむためだけでも、ルーナ コンベントを訪れる価値があります。さらには海が眼前に広がるレストラン、シンプルながら清廉な色気が漂う客室も利用できたら言うことなし。まさにこの旅のハイライトでありました。

イタリア快適ドライビングのヒント

ナポリへの帰路は、お好み次第というわけで、最後に車での旅の注意点を少々。「距離を稼ぐこと」を目的にしてはなりません。運転時間は1日2~3時間程度とし、車や道に慣れることを第一に考えて、寄り道上等・休憩頻繁をモットーに。あとはイタリアオペラのCDなど準備しておけば、至福のドライビングがあなたを待っています(おっと、文句を言わない美女もマスト・・かな?)。自分で移動する旅は、ただ目的地に運ばれていく旅よりも、はるかに強烈で忘れられない思い出を残してくれることでしょう。

教えて!ミスターM!

ホテルの部屋へ飲食物を持ち込むのはOKなの?

先日、旅をこよなく愛する我がガールフレンドの一人が、こんなつぶやきを漏らしました。「ホテル滞在って、お金を払ってお部屋を確保することでしょう?だったら好きなものを持ち込んでもいいのよ、ねえ?」 答えはイエスでありノーであります。もし4スタークラス以下のホテルに滞在するなら、部屋にビールやハンバーガーを持ち込んでも一向に構いません。しかし、もし5スター、それもとびきりのラグジュアリな5スターに滞在するなら、これは断じて「NO!」なのです。こうしたいわゆる「グランドホテル」は、滞在中の要求の全てをまかなうべき施設やサービスを持ってゲストをもてなしてくれるところ。つまり「セルフ」の概念とは対極の場所なのです。

例えば、部屋にレギュラーコーヒーとメーカーが置いてあると「サービスいいわね」などと思いがちですが、これはゲスト自身がコーヒーを入れるという「セルフ」の発想に他なりません。グランドホテルでは「一杯のコーヒー」から「食べたいスナック」まで、すべてルームサービスかバトラーによるサービスが基本であり、ゲストもそう心得てパーソナルサービスを利用する「べき」なのです。そして、こうしたホテルを定宿としているゲストとは、それを当然のこととして享受できる生活習慣とマナーを身につけているのです。そんな人たちが醸し出す優雅な雰囲気の中にテイクアウトの飲食物を持ち込む・・・これがいかに場違いな行為であるかは言うまでもありません。

もちろん、ゲストには食べたいものを持ち込む「権利」はあります。でもグランドホテルにふさわしい、よいゲストとして遇されたければ、この無言のマナーを守りたいもの。ホテルの格を見極めて、優雅なホテルライフを楽しんでください。

花鳥風月

「足元」を見られたHotel Principe Di Savoia Milano

プリンチペ ディ サヴォイアは、ミラノを代表するラグジュアリホテル。私はここに商談のため1泊だけしたことがあります。案内されたのは風格と歴史を感じさせるスイートでしたが、忘れられないのは部屋ではありません。ロビーに入ったとたん私の足元にさっと目を走らせたスタッフの、そのしぐさ!視線の先には、連日の移動でシワとホコリにまみれたカジュアルなビジネスシューズ・・・。一瞬で「私たちのホテルにふさわしいゲストかどうか」を値踏みされた気分。ハイパートラベラーを自認する私としたことが、なんたる不覚!部屋に荷物を置くや否や、ダッシュで街に飛び出しましたねえ。もちろん、きちんとした靴を買うために。

翌朝のブレックファストミーティングでも、同様の気分を味わいました。周りはビシーッとスリーピースに身を包んだビジネスマンばかり。私とてそれなりの装いはしていましたが、彼らのセンスのよさ、ふるまいの優雅さには圧倒されました。緊張と気疲れで、滞在を楽しむにはいたらなかった私のプリンチペディサヴォイア体験。次回は万事長怠りなく「存分に堪能してみせる」と心に誓い、はき慣れない新しい靴でチェックアウトしたのでした。「マイ・フェイバリット・ホテル」に登場する日をお楽しみに!