Vol.
123
旅先でムダな時間を過ごそう
気がつけば身も凍るような寒さもクライマックス。あっという間にやってきた2016年の冬は、冴えない曇り空とインフルエンザに、うんざりさせられるばかりでございましたわねえ。まあ、そうは言っても年明けはやはりおめでたいもの。つまらないことは全部忘れて、みなさまの新しい年が、お元気に過ぎていきますよう、心からお祈り申し上げるマダムヨーコでございます。
あなたは旅先タイトスケジューリング派?
さて、みなさまは海外旅行の際、滞在中の日程をガッツリ決めて行動するタイプですか? マダムの友人知人にたずねてみたところ、「う~ん、そうかも…」という返事が8割ほどでした。だって海外に行ったら、そこでしか見られないものや、できないことがたくさんあるでしょう。それに、時間も限られているから、したいことを効率的にしようとすれば、必然的にスケジューリングをせざるを得ない。確かに、その通りでございます。
わたくしはというと、いつも申し上げている通り、旅の段取りは大好きなのですが、同行者がいたり、アテンドをしたりする必要のない一人旅の時は、長距離移動をのぞく滞在中のスケジュールは、いつもほとんど真っ白です。少しくらいはポイントを決めておいた方がいいかしらん…とは思うものの、決まらないんですのよね~。というか、決めるのが苦手。特に日中にビッシリ予定が入るのがイヤなんでございますの。
日本で予約しても現地で気が変わるかも
例えば有名レストランでのランチやスパトリートメント、日時や入場制限のある観光スポットなど、事前予約をしておかないと現地手配では全くムリという場合がありますわよね。そんな時には、しぶしぶながら日本で手続きしていきますが、それがメインイベントでないならこだわりはありません。「ダメならそれでもいいや~」という気持ちで行き当たりばったりの勝負に挑みます。
だって~、現地に行ってみたら、もっとしたいことができるかもしれないし、その時にはランチやスパや観光の気分には、なれないかもしれないじゃあありませんの。それに予約をしたイベントを中心に、前後の時間や行動を調節するのもめんどくさいんですのよー。
したいことは当日の体力と気分で決めたい
だから、どんなに事前予約すれば効率的であろうと、割安であろうと、わたくしはその時にしたいことは、当日の体力や気分で決めたいのです。「あれもしなけりゃ」「ここに行かなくちゃ」と強迫観念にかられてスケジューリングをし、ピンポイントで有名スポットをタクシーで駆け回ったり、損や失敗をしたくないから事前に情報の取れるレストランにしか行かない、ということをしたくないのです~。
何も考えずぶらぶら歩いて、気が向いた店に入り、時にはしょうもない買物をして、勇気を出して路地裏のレストランに入る。もしくはドアを押す勇気が出なくて、スーパーでデリを買い込んで部屋に戻り、1人でささやかなディナーをする。わたくしにとっては、それも贅沢な旅先での過ごし方なのでございます。何かをした、見た、という体験がなくても、十分に楽しいのでございます。
無為でムダな時間だからこそ楽しい
人に自慢できるような面白エピソードなど1つもなく、旅の思い出話では一番省略されてしまう、そんな無為でムダな時間。ところが「あの時はひたすら歩いたなあ」とか「あそこに変な店があったなあ」なんていう何でもないことの方が、不思議なことにいつまでも思い出に残っているのです。みなさまも、そんな経験ありませんか?
初めてのデスティネーションでは「行った」「見た」はとても大切です。ですが、2回目はどうしますか? また同じことを繰り返しますか? よく旅行の感想で「あそこは1回行けば気がすむよ」という話を聞くことがありますが、本当にそうなのでしょうか?
情報の後追いだけじゃつまらない
もしかすると、「テレビで見た通り」「雑誌のグラビアのまんま」「インターネットの書き込みと同じ」ことを確認するだけ、つまり情報の後追いだけで満足しているのではないのかしらん。そこに、自分が見つけた、自分だけの楽しみがあったとしたら、「1回行けば気がすむよ」なんてコト、ないのじゃないかしら。きっとまた訪ねてみたくなると思いませんか?
そう、自分自身の楽しみが見つからなければ、どこに行っても「行った」だけ。 リピートする必要ないんですのよね。もちろん情報は重要ですし、とっても有益です。でも失敗やトラブルを避けるために、客観性もなければ精査もされていない情報に惑わされ、誰もがするようなことにしか興味を持たず、「王道」以外には目を向けない。それでは、つまらないじゃありませんの~。
マダムが旅に出たくなる瞬間
梅雨明けの早朝にベランダに出た時に感じる、さわやかな光にワイキキの空気を思い、細い路地に流れてくるいろいろな食べ物の匂いでバンコクの屋台を思い出し、静かな夜に1人で歩いたウィーンの裏道を思い出し、夏の終わりに冬に向かうシドニーの落ち葉を思い、ガムランの音を聞くとバリの街角のスパを思い出す。
テレビで自分が行った旅先が映し出されると「ああ、あそこにも行ったな」「そうそう、そうだった。また行きたいな」と思いますが、それよりも、また旅に出たいと思うのは、先に揚げたような日常のふとした瞬間です。結局、胸を締め付けるような「旅に出たい!」の思いは、写真に残らない光や風、匂い、音で喚起されるのであり、それにともなって浮かぶ情景は、道路や路地、バス停、なんてことのない空き地やフェンス、街並み、小さな商店なんですのよね。
美術館、オペラやミュージカル、演奏会、世界遺産や建築物などの観光スポット。「本場物」を買うという楽しみもありますけれど、自分で自分の時間を自由にアレンジできる一人旅だったら、マダムヨーコは強く主張したい! スケジュールを捨てて、街をぶらぶら歩いてみましょう、と。ささやかな喜びや楽しみが見つかれば、きっとまた旅に出たくなる。ほら、みなさまも、自分の大好きな街に今すぐ飛んで行きたくなったでしょう~。ふふふ。それでは2017年もマダムヨーコの辛口サロンを、どうぞよろしくお願いいたします。
「高級ホテルを楽しむ旅とは?」という興味深いご質問をくださった旅猫様より、「日本ではそういう旅をしていたということに気が付きました」との追伸が。「5スターではありませんが、アットホームなおもてなしをしてくださった」ので「海外でもそんな旅をするのであれば心地よいのだろうなぁ」とのこと。そうです〜、そういうのも「楽しみ」の大切な要素なんですのよ〜。次回のミスター&マダムの対談をお楽しみに!
車椅子のお母様連れでマカオ旅行を楽しんでこられたシェリー様。地元の人々の優しさに助けられたエピソード、ショッピングモールのフードコートが意外と使える話、そしてホテルの部屋から閉め出された件(お仲間! 笑)などなど…相変わらずオモシロ満載でございましてよ!
2017年も、どうぞご家族みなさまがお元気に、また楽しい旅をお続けになれますように!
使えるワンポイント英会話
「この席は空いていますか?」という意味のフレーズです。レストランやバーなどで、相席をしてもいいかどうか確認する時にも使えます。日本人は見知らぬ人との同席が苦手ですが、ひょっとしてステキな出逢いのチャンスになるかも…。時には苦手意識を捨てて「Yes!」と応じてみませんか。
「価値を判断するのは自分自身」大勢に流されず、情報に踊らされず、常に「自分は?」と自問自答することで、あなた自身の価値観が生まれてきます。
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