HOTEL in U.S.A 私が見たアメリカのホテル

Vol.
131

最近起きたチップ改革

先日、マンハッタンにあるマンダリンオリエンタルホテルのラウンジで、飲んだコーヒーのチェック(勘定書き)を受け取ったら、「すでに18%のサービスチャージを加算してあります。サービスチャージはスタッフで分けます」という一文が目立つ場所に書かれていた。それとは別に、チップの額を入れる欄もあるので、少しばかりの額を入れて支払うことにした。

以前にも取り上げたが、現在、ニューヨークのほとんどの一流レストランで、サービスチャージを加算している。マンダリンオリエンタルホテルのように、丁寧にそのことが書いてあればわかるが、書いていないところがほとんど。そして、チップを書き込む欄があり、その下に18%から21%に相当する額が書かれている。日本人のほぼ全員が、書かれている額の中から選んで、支払いをしているのではないだろうか。あとから知ったら、“騙すだようなことをして”と憤慨される人もいるかもしれない。だが、成り行き上、このようなシステムができあがたということを理解し、損をすることなく、満足のいく方法で処理をしていただきたいと思う。

チップは、法律上、ウエイター&ウエイトレスしか受け取れないものとなっている。人気レストランで稼ぐチップの額はとても大きく、そこで働くウエイター&ウエイトレスの年収は、2000万円に到達しても不思議ではないところもある。だが、そのレストランのキッチンで働くスタッフの給料はその半分以下かもしれない。キッチンで働くものたちが、この差に我慢できなくなり、立ち上がってから久しい。そのとき、差別と不公平を是正するために戦ってきたアメリカ社会は、この訴えを100%受け入れ対処にあたった。彼らにもチップが分配されるようにするために、チップ制度を廃止し、サービスチャージ制度に切り換えたのだ。

サービスチャージは、店の経常利益として、スタッフ全員の給与に加算することができるからだ。だが、それが、ゲストを満足させる役割を担っているウエイター&ウエイトレスの士気の低下を招くことになった。それは露骨にサービスの低下につながる。苦肉の策として、サービスチャージは自動的に取る。加えて、“よいサービスを提供すれば、チップも払ってくれる人がいるから、これまで通りに頑張って欲しい”という願いを込め、チップも得られる機会を残すことにした。

これまで通り、サービスチャージはなく、チップだけの店もたくさんある。そこは、多くの場合、キッチンで働くスタッフの給与と、ウエイター&ウエイトレスのチップ込みの給与の差がなく、不公平が生じていないレストランということになる。

全てのバックナンバーを見る

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントとして活躍中。

奥谷 啓介オフィシャルサイト

著書紹介

超一流の働き方

ビートルズ・ケネディ大統領・サウジの大富豪……全世界のVIPらに愛され、マネージャーとして超一流の世界で学んだ世界標準の「サービス」「心の持ち方」「自分の活かし方」「生き方」を公開!

なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

「アメリカのホテルで1万円儲かることが、日本のホテルでは3,780円しか儲からない」といわれるほど世界最低レベルの生産性。働けど働けど儲からないワーキングスタイルに苦しめられるのはもうやめよう。

はえくんの冒険

(原作:アントニオ猪木、著:ケニー奥谷、絵:八雲)
ブラジルの中央、マッドグロッソにある牧場に生まれた「はえくん」の物語。原作のアントニオ猪木氏が自身の体験をもとに長年あたためてきた企画が、奥谷氏の手により絵本になりました。大人が読んでも楽しめる愛と友情の物語です。

サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

サービスを向上させるにはスタッフを幸せにすることが一番の近道。アメリカの超一流ホテルでの経験から綴る業界改革論。

海外旅行が変わる ホテルの常識

「プラザ」元マネージャー直伝、一流ホテルで恥をかかない滞在術。この一冊があなたのアメリカ滞在を変える!レジャーはもちろん、ビジネスにも役立つ情報の集積。国際人の責任として、海外に行く前にその国の常識を学ぼう。

世界最高のホテル プラザでの10年間

アメリカのホテルはなぜこんなに不愉快なのか!?「日本人利用客」VS「アメリカ人従業員」。果てしないトラブルの非は、どちらにある?敏腕マネージャーがフロント・デスクの内側からみた「日米比較文化論」。

こちらもおすすめ