HOTEL in U.S.A 私が見たアメリカのホテル

Vol.
97

世界のホテルチェーンの変遷

アメリカ最大手のホテルチェーンの一つ、スターウッドがマリオットに買収されることになった。これでマリオットが約55,000軒にのぼる、世界最多数のホテルを傘下に置くホテルチェーンとなる。

1997年、プラザホテルの営業で日本に出張に行ったとき、偶然にも、ウエスティンホテルズセールスオフィスで、スターウッドの創設者らに会ったことがある。まだ私と同じ年くらいの若者たちだった。彼らが、当時のウエスティンのオーナー、青木建設と交渉を行っていたときのことだった。

ウエスティンホテルズ買収の意図を尋ねると、「高く売れるホテルチェーンにして、お金を儲ける。そしてアーリーリタイヤメントするんだ」という答えだった。その後、彼らはシェラトンホテルズを買収。ウエスティンホテルズとシェラトンホテルズを2大ブランドとし、Wホテルブランドを作り、フォーポイントホテルズなど、エコノミーブランドをも吸収し、巨大ホテルチェーンに向って走り始めた。時を同じくして、マリオットもリッツカールトンをはじめとした多くのホテルチェーンを買収していく。インターコンチネンタルもヒルトンホテルズもそれに続いた。

こうしたホテルチェーンのメガトレンド(巨大化)を促したものは、1990年から始まったIT革命だった。インターネットの普及により、ホテルチェーンは、メールマガジンや自社サイトを利用して、直接、顧客にPRをかけることが可能となった。どのホテルチェーンも、傘下のホテルに泊まれば加算されるポイントシステムを強化し、顧客の囲い込みを狙い始める。

世界中どこに行っても、エコノミーから最高級ホテルまで揃っていれば、他のホテルチェーンを利用することなく、同系ホテルチェーンだけで間に合う。競争に勝つためには、こうした状況を作りだすことが必要だったのだ。今後、マリオットのメンバーシップとスターウッドのメンバーシップは統合されていくことになるだろう。

あれから18年。スターウッドホテルズは1,200軒以上ものホテルを傘下に置く巨大ホテルチェーンに成長し、1兆5千億円という天文学的な額で売られた。彼らは当初の目的を果たしたのだ!

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著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントとして活躍中。

奥谷 啓介オフィシャルサイト

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