HOTEL in U.S.A 私が見たアメリカのホテル

Vol.
77

超一流のエリートたる所以

私がプラザホテルで仕事をともにした超一流エリートビジネスマンたちは、仕事が終わった後に一杯飲むことはしなかった。彼らは8時間の睡眠時間を確保しようとする。午後10時にはベッドにはいらなければならないから、飲みに行く時間などないのだ。

アメリカの医師が奨励することは、一日に八時間の睡眠をとり、週に三回以上は二十分以上の運動をし、年に一~二回はバケーションをとること。その主なる目的はストレスを解消することにある。人はストレスの下で、間違った判断を行う可能性が大きくなる。トップダウン制の組織の中で働くビジネスマンにとって、判断ミスは会社の業績に大きなダメージを与え、自分のポジションを危険にさらすことになる。だから、彼らは常に最高のコンディションを維持しようとする。そのためには、十分な睡眠時間が必要なのだ。

自身でストレスをためないようにしているのだから、もちろん、部下にもストレスを与えない。部下が失敗をしたときは、叱るのではなく、再発を防ぐための指導を行う。部下が自分で再発防止策を見つけることができないときには、的確なアドバイスをし、「わかりました。それならばできます」という言葉を聞いてから、「頑張れ」と背中を叩く。部下にストレスを与えることは、彼らの二次、三次の失敗を引き起こして会社にダメージをもたらすことにつながる。これが理解できなければ、一流のビジネスマンとは呼ばれない。

また、外部から来るストレスを受け流す方法も知っている。上からの小言もゲストの怒りも、正面から受けとめず、傷つき落ち込む状態に自分を追いやらない。状況を分析し、二度と同じ状態にはまることのないように、自分を進化させる材料とする。

自分が怒るときも同じこと。怒りは極度のストレス状態をもたらす。本能は、ストレスを発散させるために、相手へ威嚇あるいは報復行動へと駆り立てる。だが、ストレス状態での判断は多くが誤りとなり、あとから、「あんなことをしなければ良かった」と後悔することが常。ならば、怒りが静まるまで待つ訓練をする。

超一流たるゆえんは、常に自分の感情をコントロールし、論理的に正しいことを貫き通す力と、「こうしたら、こうなる」という先を読む能力を持っていること。そのために、自分を第三者の立場から見る目を心の中に置く。仕事を行うときには、「自分らしく」は捨てるのだ。

超エリートビジネスマンになるのは、それほど難しいことではない。彼らの動きを真似るだけで十分。あなたも取り入れてみてはいかがだろうか?必ずや、人から一目も二目も置かれる“できる仕事人”になれるはずだ。

全てのバックナンバーを見る

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントとして活躍中。

奥谷 啓介オフィシャルサイト

著書紹介

超一流の働き方

ビートルズ・ケネディ大統領・サウジの大富豪……全世界のVIPらに愛され、マネージャーとして超一流の世界で学んだ世界標準の「サービス」「心の持ち方」「自分の活かし方」「生き方」を公開!

なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

「アメリカのホテルで1万円儲かることが、日本のホテルでは3,780円しか儲からない」といわれるほど世界最低レベルの生産性。働けど働けど儲からないワーキングスタイルに苦しめられるのはもうやめよう。

はえくんの冒険

(原作:アントニオ猪木、著:ケニー奥谷、絵:八雲)
ブラジルの中央、マッドグロッソにある牧場に生まれた「はえくん」の物語。原作のアントニオ猪木氏が自身の体験をもとに長年あたためてきた企画が、奥谷氏の手により絵本になりました。大人が読んでも楽しめる愛と友情の物語です。

サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

サービスを向上させるにはスタッフを幸せにすることが一番の近道。アメリカの超一流ホテルでの経験から綴る業界改革論。

海外旅行が変わる ホテルの常識

「プラザ」元マネージャー直伝、一流ホテルで恥をかかない滞在術。この一冊があなたのアメリカ滞在を変える!レジャーはもちろん、ビジネスにも役立つ情報の集積。国際人の責任として、海外に行く前にその国の常識を学ぼう。

世界最高のホテル プラザでの10年間

アメリカのホテルはなぜこんなに不愉快なのか!?「日本人利用客」VS「アメリカ人従業員」。果てしないトラブルの非は、どちらにある?敏腕マネージャーがフロント・デスクの内側からみた「日米比較文化論」。

こちらもおすすめ