アップグレードを狙うゲスト|私が見たアメリカのホテル|ホテリスタ
HOTEL in U.S.A 私が見たアメリカのホテル

Vol.
69

アップグレードを狙うゲスト

言うまでもなく、ホテルの客室にはカテゴリーがある。多くの場合、スタンダード、デラックス、○○ビュー、スイートなどの名称で別れている。もちろんホテルは値段の高いカテゴリーを多く売りたい。だが、実際は、スタンダードカテゴリーに予約が多く入り、不足をアップグレードして埋める場合が多い。それゆえ、ホテルは頻繁にアップグレードするゲストを探している。

過去に滞在した記録を持っているゲストは大概、最初にアップグレードリストに入る。また、チェックイン時に身分証明を求めて誕生日を確認し、滞在中に重なれば、「お誕生日おめでとうございます。記念にアップグレードさせていただきます」などとなることもある。

こうした事状を知っているゲストは、自ら、「滞在中に○○記念日が来るので、よい部屋に入りたい」などとほのめかしてアップグレードを狙ったりする。さらには、チップをフロントスタッフに渡して、「記念日が重なるからアップグレードしてくれたら有難いんだ」などという大胆な行動にでる人もいる。前者は、ホテルがアップグレードするゲストを探している場合には、まず成功する。後者は、たとえ探していないときでも、上のカテゴリーに空きがある場合には成功する可能性が高い。

私が働いていた当時のプラザでは、デラックスカテゴリーとパークビューカテゴリーの値段の差は、1泊あたり150ドル以上はあった。3泊するゲストが、フロントスタッフに50ドルのチップを渡して、パークビューの客室に入れたとしたら、400ドルの得をすることになる。

チップが入る部署では、平等を保つために、チップは一度回収されて、勤続年数に従って分配されるというルールがある。だが、フロントのようにチップが入らない部署では、そうした決まりはなく、彼らのポケットに入る。50ドルともなれば、無視できない金額。なんとしてもアップグレードを成功させたいと思うのは当然のことだ。慣れたゲストは、フロントがなんとかしたいと思う金額を考えて駆け引きをしてくる。日本ならば、「馬鹿にしないでほしい」などと思うスタッフもいるかもしれない。だが、アメリカはチップで動く社会。彼らは素直に感謝し、それにあった見返りを提供する。

私もホテルを予約するとき、カテゴリーと値段の差を見ながら、こんな高い差額は払えないと思うとき、こうしたSneakyな方法を使うことがある。

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著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントとして活躍中。

奥谷 啓介オフィシャルサイト

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