Vol.
45
サービスの違いは文化の違い
- Omni Royal Orleans
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先週、久しぶりにプラザホテルのパームコート(ロビーの中央にあるカフェ)で朝食をとった。昔からのことだが、そこのサービスには感心する。だが、そう感じるのは、私がアメリカのサービスを知っているからであって、日本からの旅行者はそうは感じないかもしれない。知識があるか否かでサービスの受け取り方はがらりと変わるものだからだ。
概して、日本のホテルは“丁寧さ”を売りとしている一方、アメリカは“物”を売りとしていると言える。例えば、プラザのような一流ホテルで朝食をとれば、ジュースやコーヒーは「もう少し飲みますか?」と聞いて継ぎ足してくれる。トーストでも「もう少し欲しい」と言えば、無料でだしてくれる。しかし、日本のホテルでは、コーヒーは継ぎ足してくれるが、ジュースやトーストとなると有料となるし、量も多くない。また、アメリカの多くの一流ホテルのプールやジムは無料で利用できるが、日本のホテルで、それらを無料にしているホテルはまずない。
一方、トラブルが起きれば、ゲストが納得するまで丁寧に対応してくれるのが日本のホテルだが、アメリカのホテルでは、面倒と感じればゲストを途中で見離すこともある。私が働いたホテルでも、ゲストの言うことが理不尽な領域に入ると、“Let them go.”「他に行ってもらえ」となったものだった。これは法律の厳しい国と法律のゆるい国という差が引き起こしている現象とも言える。厳しい法律の国では、人は皆平等であるという強い意識を持たなければならず、ゲストだろうとスタッフだろうと、その部分は崩せなくなる。よって、ゲストであろうとも、法外なことを言うと相手にされなくなる厳しさがある。
さらに、アメリカのホテルと日本のホテルではスタッフの人数が大きく違う。さまざまな要素によって変わってくるが、平均してアメリカのホテルは日本のホテルの7割程度のスタッフ数で運営される。人の数の差は絶対的なサービスの差となって現れる。その昔、バンコックのオリエンタルホテルが世界一のサービスを誇るホテルと言われたが、それも、安い人件費で多くのスタッフをやとうことができたから可能だったことだ。アメリカのように、利益をあげることを究極の目的としている国では、最低限の人数で運営することを余儀なくされる。それをカバーするために、マニュアル&システム化を強化し、チップでスタッフの働く意欲をあげ、多くの物をだすサービスを行う。
サービスの差は、それぞれ国の文化が生みだしているもの。海外では日本と同じサービスは期待できないが、その国々のサービスの優れた面を認識していれば、旅はそれだけ楽しいものになる。
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著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントとして活躍中。

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