Vol.
36
アメリカのホテルのクオリティーコントロール
アメリカ人と比べれば日本人はとても謙虚。それがホテル運営にも現れていて、「クレームをあげるお客様ほど大切にする」という姿勢ができあがる。“雨降って地固まる”という諺のように、クレームを処理した後に、ゲストがそのホテルの大ファンになるということが起きる。私も日本人ゲストを相手にそれを経験したことがある。ゲストと私の間に絆ができ、次にお越しの際にはわざわざお土産まで持ってきてくださったりする。ホテルはそのゲストには特に気を使うから、快適な滞在を楽しむチャンスが増すことになる。
一方、アメリカのホテルでは、クレームをあげたゲストは、そのホテルには戻ってこないと考えるのが普通のパターン。なぜなら、アメリカのホテルは日本のホテルのように、クレームに対してとことん対応をしないので、処理をしてくれたスタッフとゲストの間に絆ができあがることはほとんどないからだ。
そこでアメリカのホテルが行うことは、クレームがあがらないようにシステムを作りあげること。例えば、接待でレストランを利用するホテルの営業マンは、注意深くレストランを使い、欠点を見つけたらレポートをあげて改善を行う。もちろんレストランマネージャーもシェフも最高のサービスと料理を出す最善の努力をしているのだが、中で働いている者には見えない点が必ずある。それを補うために、営業マンが第三者の目を持って至らぬ点を探す役割をするのだ。このようにしてクオリティーコントロールをするのが一流ホテルの手法。
だが、実は日本でもクレームをあげるゲストは三割もいればいいほうで、不満を持った七割のゲストはクレームをあげずに二度と帰ってこない。だから、クレームをあげるお客様ほど大切にするのではたくさんのゲストを失うことになってしまう。第三者の目によるクオリティーコントロールが必要になるのは日本でも同じことなのだ。
営業マンの目によるクオリティーコントロールのようなかわいらしいものではなく、ホテルチェーンとして、“第三者の目”を得るためにコンサルタント会社を利用しているところもある。調査官はゲストのふりをしてホテルに泊まり、数えきれないほどの項目をチェックしてゆく。その点数がヘッドオフィスに送られ、点数いかんによっては総支配人の資質が問われることになる。実際、アメリカの大手ホテルチェーンではこのようなシステムを利用しているところがたくさんある。危機感を働く原動力とするアメリカらしい方法と言える。
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著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントとして活躍中。
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