HOTEL in U.S.A 私が見たアメリカのホテル

Vol.
34

ホテル業界から見る日本の近未来

ハーバード大学(大学院や研究室を含まず)で勉強する韓国の学生は42人。日本は5人だそうだ(※2009年度)。大学生の人口では日本は韓国の2倍いる。この数字が示すことは、いかに日本人のアメリカへの留学生が少ないかということ。

6年前にプラザが閉館したときに辞めていった私の同僚たちは、いろいろなところで出世をはたしている。総支配人になった者もいる。その中には、インド人、エジプト人、クロアチア人、中国人などがいる。私が他のアメリカのホテルで働き続けていたとしても、彼らのようには出世はできなかっただろう。なぜなら、私はアメリカの大学をでていないから。

アメリカは極度の学歴社会。人種が出世に影響を与える時代はすでに終わっている。ものを言うのは大学で取得した単位だ。残念ながら、日本の大学の単位はアメリカ社会では認められない。アメリカ、もしくは世界的に有名な大学の単位でないと力にならないのだ。

ホテル業界を見ていると分かるが、これから多くの日本企業は他国籍企業に買収されてゆく。そこのトップで働く者は他国人。なにも、アメリカ人とは限らない。アメリカのホテルならば、さまざまな国出身の総支配人が誕生している。今まで以上に多くの他国籍企業が日本に入ってきて、そこのトップは他国から来た人。その下で日本人が働くという構図ができあがることになる。そのトップは他のアジア人かもしれない。残念だが、日本人がそのトップに座ることはまずないだろう。

トップに座るには、他国籍企業でエグゼクテイブになれる能力を持っていなければならない。そのためには、アメリカの大学、あるいは世界的に有名な大学の単位を取得することが必要。だが、他国で勉強をしている日本人はわずかしかいない。私が若いころは、「日本は学歴社会」と言われた。これからは、欧米の有名大学をでていることがものを言う時代がくる。これが、グローバル化が造り出す新学歴社会だ。

グローバル化に乗り遅れた日本人が、他国の人々の下で働くことになるのか、あるいは、奮起して、他国籍企業でも出世できる日本人がでてくるのか、これからの10年間が日本の行方を左右する。

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著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントとして活躍中。

奥谷 啓介オフィシャルサイト

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