HOTEL in U.S.A 私が見たアメリカのホテル

Vol.
16

経済を回復させる社会構造と悪化させる社会構造

サンクスギビング(11月最後の木曜日)からクリスマス前までの期間は、ニューヨークのピーク中のピーク。通常は3スターホテルでも取れない。取れても、400ドル以上するのが当たり前。だが、今年は取れる。それも昨年より2割以上も安い値段で。こんな状況は、私が1994年にニューヨークに来て以来、初めてのことだ。1ドルが100円を割り、ニューヨークに来るには絶好のときを迎えている。だが、この状況はそれほど長くは続かないだろうと私は思う。

先月、日本に1ヶ月間滞在していた。テレビで、ジャーナリストたちが、「アメリカ発の金融恐慌だというのに、アメリカのエコノミストたちはあまりにも楽観的すぎて、腹が立つほどだ。」と、コメントをしているのを聞いた。
アメリカ人と仕事をしていると、彼らの楽観性がいやというほど分かる。だから、私も思ってしまう。アメリカの景気が回復するのにそれほど時間はかからないだろうと。アメリカの景気動向を探るうえで、彼らが一番気にかけていることは消費支出。アメリカの社会は、市民がお金を使えば景気がよくなる構造になっていると彼らは言う。

リーマンショックで、株価暴落は、1929年の大恐慌以来の動きとなった。だが、私の周囲にいるアメリカ人は皆とても楽観的だ。株価が上昇し始めれば、またすぐにお金を使い出す。すでに、67兆円の公的資金投入の話題で、来年早々、株価が上昇し出すことを期待し、お金を使いだす意欲をもてあましている。こう見ると、この社会構造自体が経済をもち上げるうえで相乗効果をもたらすようにできているように思える。
一方、日本の社会構造は正反対な動きをする。マスコミは世の中の動向をより悲観的に報じる。そうしないと、人々の感心を引きつけられず、視聴率があがらないからだ。以前、たんそ菌騒ぎがおきたとき、ニューヨークに住んでいる者はさほど気にしていないのに、日本のニュースは「たんそ菌の恐怖がニューヨークで広がっています。」と報じた。日本から来た人が、「ニューヨーカーは皆マスクをして町を歩いていると思っていたのに、おかしい?」と首を傾げた。

日本の国民性がマスコミの報道内容をより悲観的なものにさせ、それが人々の不安をさらに深いものにしてゆく。結果、財布の紐はますます硬くなり、経済を悪化させるという悪循環を引き起こす社会構造が見えてくる。これに歯がゆい思いをさせられる。この点に関して、アメリカ型の社会構造を導入することができないものだろうか。

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著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントとして活躍中。

奥谷 啓介オフィシャルサイト

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