Vol.
6
歴史に根をもつ日米のサービス形態の違い
- The Ritz-Carlton New York, Central Park
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外国のホテルにいると、日本人の危機管理能力の欠如を痛切に感じる。「部屋で盗難にあったのだから、責任をとってもらいたい。」などと言う人がまだいる。
アメリカのホテルでは、部屋どころか、部屋に備え付けのセーフテイーボックスの中ですら、所持品の紛失には責任を取らない。「どうやって、そこに貴重品があったことを証明するのですか?」とひとこと言えば、それで終わりにできる。もし弁償などしようものなら、ホテルは詐欺師の絶好の餌食となってしまう。だが、そんな失礼なことは言いたくないので、「部屋の紛失には一切責任を負いません」と約款に書いて終わりにしている。
アメリカには西部開拓史以来の「自分の身は自分で守る」という精神がある。その精神を失いたくないから、いまだに銃社会が続いている。他人に依存すれば、この精神を否定することになる。自己責任が強い社会が出来あがった所以だ。だから、ホテルへのゲストの依存度も高くならない。ゲスト自らが動いてサービスを受けられるシステムへと発展した理由の一つがここにある。
日本の宿泊文化は、江戸時代の参勤交代に利用された「旅籠」の繁栄から始まった。家来はすべて男達だから、集客力強化のために女性が宿泊客の面倒をみた。必然的に「至れり尽くせり」のサービス精神が発達することになった。その精神が「旅館」で磨かれ、今日のホテルへとつながっている。ゲストのホテルへの依存度が高いのは当たり前だ。
アメリカと日本の宿泊文化はその成り立ちからして、サービス形態に差があったのだ。だから、日本のホテルに泊まる感覚でアメリカのホテルに泊まれば、快適な滞在は難しくなる。アメリカに行く際には、この点をしっかりと認識しなければならない。
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著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントとして活躍中。

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